(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は1バレル=100ドル前後の高値で推移している。

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、世界の原油市場は大荒れになっているが、まず供給サイドの動向から見てみたい。

増産の働きかけに応えないOPECプラス

 OPECとロシアなどの大産油国で構成されるOPECプラスは3月31日、5月の原油生産量を日量43.2万バレル増産することを決定した。OPECプラスは昨年8月から毎月40万バレルのペースで増産を行ってきたが、一部の国々の減産の基準となる生産量を見直したことから、5月の増産幅は従来に比べ3.2万バレル拡大した。

「経済制裁の影響でロシアから石油輸出が日量250万バレル減少する」との懸念から、先進諸国が増産を働きかけていたが、OPECプラスは「原油相場の激しい値動きはファンダメンタルズではなく、進行中の地政学的な展開によるものだ」として増産のペースを加速することはなかった。OPECは3月24日「欧州連合(EU)がロシア産原油の輸入を禁止すれば、消費者が打撃を受けることになる」との懸念をEU側に伝えていた(3月25日付ロイター)。

 他の産油国がロシアに代わって大幅増産すれば、OPECプラスの結束を揺るがすことになるとの配慮も働いた可能性がある。