1954年まではロシア共和国に属し、ロシア人も多いこの地域は住民投票をすればロシア帰属が決まるのは当然であった。ただ、クリミアの住民投票は、ウクライナ全国民が行ったものではなく、「領土変更は国民投票によってのみ議決することができる」と規定するウクライナ憲法73条の違反であることは確かである。そこで、ロシアは、クリミアに独立宣言をさせ、独立国家としてロシアに併合させたのである。

 今回、ウクライナ東部で、ルガンスクとドネツクを独立国家として承認したのは、このクリミア併合と同じプロセスを追求するためだと考えられる。

シリア

 2015年9月30日、ロシアは空爆によってシリア内戦に介入した。その介入の真の理由は、クリミア併合によって起こった国際社会からの激しい批判を鎮めるためだったと言われている。

 ロシアの介入の大義名分は、国際テロ集団ISを壊滅させるためということだった。アメリカはシリアから手を引きたがっているので、この地域を安定させる大国としての役割を果たすと胸を張ることもできる。その結果、中東におけるロシアのプレゼンスが高まる。しかも、シリアから利用を認められている港は、ロシアにとっては地中海に面した唯一の海軍基地である。アサド政権が崩壊しては困るのである。

 シリア内戦から逃れてくる大量の難民でヨーロッパ諸国は苦労しており、シリアの安定化をもたらすロシアの介入は歓迎される。その結果、クリミア併合への批判が希薄化されるという狙いもあった。

 まさに、シリア内戦への介入は、プーチンにとっては一石二鳥も一石三鳥にもなったのである。