今回のウクライナはどうなる
今回のウクライナに対するプーチンの軍事介入も、基本的には、チェチェン、グルジア、クリミアと同じパターンである。しかし、ロシアとウクライナの過去の緊密な関係、言語や文化の相似性などに加えて、「NATOの不拡大」というロシアの安全保障政策の根幹に関わる問題に直結していることが、事態の解決を困難にしている。
アメリカにとっては、下手にロシアに妥協すれば「ミュンヘンの宥和」と同じだという批判を受ける。しかし、1962年のキューバ危機の裏返しだと思えば、もう少し知恵を働かせた対応ができたのではないか。「手負いの熊」に武器なしに立ち向かうのは無謀である。第三次世界大戦、核戦争の危険性があるので、欧米は軍事的反撃はできない。経済制裁の効果も限られている。
西側の対応策の弱みまでプーチンに見透かされてしまっている。ウクライナのゼレンスキー大統領の政治的能力にも疑問符を呈さざるをえない。
同じくロシアと国境を接しているフィンランドは、1995年にEUに加盟したが、NATOには加盟していない。「冬戦争」(1939年11月〜1940年3月)などソ連と戦火を交えた経験が、そのような慎重さを生み出したのである。フィンランドはNATOのメンバーではないが、裏ではアメリカと緊密な協力関係を築いている。ゼレンスキーに必要なのは、このフィンランドのような知恵である。
今後の展開は予断を許さないが、世界の指導者たちは、なお外交努力を展開して、紛争の解決に努めねばならない。