3月2日、ロシアはウクライナ第2の都市ハリコフに無差別なミサイル攻撃を実施、州庁舎などを破壊して多くの被害者が出た(提供:Press service of the Ukrainian State Emergency Service/ロイター/アフロ)

 米歴史学者で戦略家のエドワード・ルトワック氏は、ロシアの大統領ウラジーミル・プーチンがウクライナの抵抗や、欧米諸国の対ロ制裁やウクライナへの支援について甘い見積もりがあったと示唆し、これらについて言及している。

 例えば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米国の亡命提案を拒否した。これによってウクライナ軍は士気を高め、必死の抵抗を見せた。

 こうしたウクライナの「英雄的な抵抗」に続き、西欧諸国の対応も変化した。

 SWIFT(国際銀行間金融通信協会)からのロシア排除に消極的だったイタリアやドイツは一転して賛成に回り、武器供与に慎重だったスウェーデンなどの中立国もウクライナへの武器支援に踏み切った。

 このため、「迅速でほとんど努力を要しない勝利が約束されていた」プーチンは「突然窮地に立たされた」とルトワック氏は指摘している。

 今、ウクライナはロシア軍による侵攻に必死の抵抗を続けている。市民も自ら立ち上がり、祖国防衛に当たっている。

 だが、ロシアの総兵力は90万人とウクライナの19万人を圧倒しており、戦闘機や戦車などの保有数でもロシアがウクライナを大きく上回っている。

 軍事力で劣勢なウクライナが、いつまでロシア軍の動きをとどめられるのか、今後の展開は楽観できない。

 一方、米国をはじめNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに武器供与などの軍事支援を行っているが、部隊を派遣しない方針を維持している。

 なぜ米国やNATOはウクライナを助けるために部隊を派遣しないのか。ロシアとの軍事衝突は核戦争へ発展する恐れがあることを考慮に入れてのことである。

 早々に米国およびNATOは、ロシアのウクライナ侵攻に対応して軍事力を行使しないことを明言した。

 しかし、筆者はバイデン氏を弱腰であると非難するつもりはない。筆者は核戦争を回避するというバイデン氏の選択を尊重したい。

 今、プーチンは正常な判断ができない状態にあると筆者は見ている。おりしも米国のCNNテレビは、米政府高官が情報機関に対し、プーチンの精神状態に関する情報収集を指示したと報じた。