インドネシアのマンクネガラン王宮は、新年の「サトゥ・スーラ」祭りで着用する伝統衣装にフードリボンのパイナップル繊維を採用(2024年7月7日)(写真提供:FOOD REBORN)

 3月17日に厚生労働省から発表された2024年賃金構造基本統計調査では、男女の賃金格差が過去最少になるなど、女性の社会進出や活躍にさらなる期待がかかる。そこで、日本企業全体の99.7%を占める中小企業において、時代を変えようと奮闘する女性経営者をシリーズで取材。第1回は、未利用農業資源の活用によって沖縄を起点にアジアで高い評価を獲得するFOOD REBORN(フードリボン)の宇田悦子氏だ。

(岸 美雪:ライター・編集者)

 農作物の規格外品は半分近く廃棄されている

 沖縄県大宜味村に本社とファクトリーを構える株式会社フードリボンは、未利用の農業資源の活用によって持続可能な社会の実現を目指すスタートアップ。起業から8年を迎える現在の主力事業は、パイナップルやバナナなどの廃棄葉を活用した新たな天然繊維の開発と、環境負荷の少ない循環システムの構築・展開だ。

 世界初の水圧による繊維抽出機を独自開発し、著名なジーンズやアロハシャツブランドをはじめ、大手アパレル企業との協業を実現。海外展開も推し進め、昨年7月にはインドネシア・マンクネガラン王宮との提携により、H.R.H. マンクナゴロ10 世が新年の祭りで着用する伝統衣装ベスカップ(ジャケットスーツ)に、パイナップル繊維の生地が採用されるという快挙も成し遂げた。

 代表取締役社長の宇田悦子さんは、神奈川県出身。沖縄や農業、SDGsとは無縁の大手美容企業に勤務していたが、妊娠や育児でやむなく時短勤務をしなければならなくなったことなどから3人目の出産を機に独立を決意。個人事業を開始し、子供の通う保育園の保護者仲間から紹介された農産物を粉末化する会社の業務を受託したことが、現在につながる。

フードリボン 代表取締役社長 宇田悦子氏(撮影:山下 亮一)

「日本の農作物は、さくらんぼの佐藤錦といった高級ブランドでも傷がついたり見栄えが悪かったりする規格外品は市場に出回らず、生産量の半分近くが廃棄されていることを知ってショックを受けました。農林水産物の未利用資源をもっと活用したい!しなければ!と全国を巡った先の一つが沖縄でした」