モーターの高効率化には大きなビジネスチャンスがある。写真はネクストコアテクノロジーズが開発した部品を使ったモーターのカットモデル

人手不足、コスト高、技術革新への対応…中小企業は数々の経営課題に直面している。とりわけ、人口減が進む地方では深刻だ。しかし、中にはキラリと光る技術やアイデアを持つ企業が各地にある。本連載では地方で躍動する企業にスポットライトを当てていく。今回紹介するのは、京都府宇治市のネクストコアテクノロジーズ。電気自動車(EV)などで、市場拡大が見込まれるモーターのエネルギーロスを大幅に減らす部品の量産化を進めている。まったく異なる地域に基盤を置く3社が連携して、大手企業が実現できなかった技術開発にめどをつけた。

(土井 滋:ビジネスライター)

1%の改善で原発12基分のエネルギーが浮く

 最初にクイズです。私たちが日々何気なく使っている電力の多くは何に使われているのでしょうか?

 答えは「モーター」です。

 なんと世界の電力の半分は、モーターが消費しているのです。ところが、モーターに使われている電力のうち、一定割合が駆動力として使われず、熱などになって失われています。

 電気自動車(EV)が広がっているように、モーターのさらなる利用が見込まれる中、こうした損失をいかにして減らすかが大きなテーマになっています。机上の計算ですが、モーターのエネルギー効率を1%改善すると、世界で原子力発電所12基が必要なくなるくらいインパクトが大きいので、わずか1%でもバカにはできません。

 EVだと同じバッテリーでも、エネルギー効率の良いモーターを搭載していれば、その分、1回の充電で走れる航続距離が伸びます。私たちの生活にとってもメリットがあるわけです。

 そんなモーター開発に寄与する技術を、日本の中小企業が開発し、量産に乗り出そうとしています。京都に本社を置くネクストコアテクノロジーズという会社です。

 同社が開発したのは、モーターの主力部品となる鉄心(コア)で生じる損失(鉄損)を大幅に減らす製品。従来、コアに使われていた電磁鋼板の代わりに積層アモルファスを採用したことで、損失を10分の1まで低減できます。

 ネクストコア社の山本勇輝社長が「国内外の多くの自動車メーカーから引き合いを頂いています」と言います。EV市場の急速な市場拡大が見込まれるなど、モーター技術は世界中の企業がしのぎを削っています。そんな激戦の分野で、どうやって開発にめどをつけたのでしょうか?