- 電気自動車(EV)市場の伸びが世界的に鈍化している。テスラの2024年1〜3月期のEV販売台数は4年ぶりに前年同期の実績を下回り9%減となった。
- BYDなど中国勢の低価格攻勢が一因だが、新しいもの好きの需要が一巡し、本格普及に向けた壁、いわゆる「キャズム」に直面していることが大きい。
- テスラや欧州勢のEV先行組が足踏みするなか、出遅れを指摘されていたトヨタ自動車やホンダなどはむしろEV化にアクセルを踏む。日本勢にはむしろチャンス到来だ。(JBpress)
(井上 久男:ジャーナリスト)
電気自動車(EV)大手のテスラが4月23日に発表した2024年1~3月期決算は、売上高が前年同期比9%減の約213億100万ドル、営業利益は56%減の11億7100万ドル、純利益は55%減の11億2900万ドルとなり、4年ぶりの減収減益となった。
テスラの同期間のEV販売台数は9%減の約38.7万台で同じく4年ぶりに前年実績を下回った。
テスラの業績の落ち込み要因は大きく2つあると見られる。まずは、勢いがあるBYDなどの中国勢の値引き攻勢に巻き込まれ、収益性が下がっていること。次にEV市場の伸びが世界的に鈍化していることだ。後者については、テスラを猛追するBYDの1〜3月期の販売台数は13%増の約30万台と前年実績を上回ったものの、伸び率が昨年同期の84.8%から大きく落ち込んでいる。
EV販売は欧米で減速している。ドイツでは補助金が打ち切られたことや米国では金融引き締め策が影響しているとの見方もある。地域差はあるものの急速充電設備が十分に普及していないことや相対的に価格が高いことなども普及を妨げる一因だろう。
現在のEVの置かれた状況は、「キャズム」という概念にぴったり当てはまる。導入期に一定の存在感を示した製品が普及期で壁にぶち当たり、伸び悩むことを指す。EVは今、まさにこの「キャズム」に直面している。