トヨタ自動車の2024年3月期決算発表(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 2025年3月期の業績見通しで、日本の自動車メーカー各社の想定為替レートが大幅な円高シフトとなっている。
  • 上場企業全体でも140円台半ばとしているケースは少なくないが、マツダが2025年3月末時点で1ドル=136円と設定するなど、かなりの円高想定だ。
  • 米国では秋に大統領選が控え、トランプ氏が復帰すれば「令和のプラザ合意」が行われるとの見方もあり、各社の業績見通しには円高加速への警戒感がにじむ。(JBpress)

(井上 久男:ジャーナリスト)

 日本の自動車メーカーが大幅な円高シフトを想定している。マツダは2025年3月末時点に1ドル=136円と、現在の実勢レートよりも20円近い円高を想定して業績予想を開示した。通期でも143円を想定している。

 マツダは北米販売が好調で、24年3月期には米国とメキシコで過去最高の販売台数を記録した。25年3月期も北米で前期比16.7%増の60万台を見込んでおり、グローバル販売の4割超を占める。

 収益性の高い米国市場で販売が伸びるため、25年3月期決算の業績見通しでは本業のもうけを示す営業利益は8%増の2700億円となり、過去最高を更新する計画だ。ところが、当期純利益は28%減の1500億円となる見通し。この理由は、円ドルの為替レートを大幅な円高に設定したため、保有するドル資産が目減りすることで減損処理を行うからだ。

 今後、米国では金利が下がり、日本では金利が上がる流れにあると見て、日米金利差縮小による円高ドル安が進むと、マツダは見ている。

 マツダの毛籠勝弘社長は米国法人の社長を務めた米国通。ナンバー2のジェフリー・ガイトンCFOはその後任だった。米国をドル箱市場と位置付け、米国の経済事情にも精通している。

 他社も円高を想定。トヨタは1ドル=145円、ホンダは140円、スバルは142円で計画している。企業は為替予約を行うなどして為替変動のリスクヘッジをしており、実勢レートと想定レートに開きが出るのは珍しくないが、それにしても実勢レートと比べると大幅な円高ドル安の想定だ。

 業績が確定した24年3月期決算の実績レートと比較すると、マツダは145円→143円と2円の円高、トヨタは145円→145円と横ばい、ホンダは145円→140円と5円の円高、スバルは144円→142円と2円の円高となっている。

 各社が実勢レートよりも大幅な円高を想定している理由は大きく3つあるようだ。