EV市場をBYDが席巻している。写真は2024年のバンコクモーターショー(写真:ロイター/アフロ)

電気自動車(EV)分野を強化するため、自動車メーカーで国内2位の日産自動車と3位のホンダが包括的協業に向けた覚書を締結しました。背景には、中国勢がEV市場を席巻し、日本勢は単独メーカーでは対応が難しくなってきたためです。特にEVで世界トップの「中国BYD」は1年前から日本市場にも参入し、瞬く間に販売網を拡大させてきました。中国BYDとは、いったいどんな存在なのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

中国政府のEV支援策を受けて急成長

 日産自動車とホンダの提携発表は3月15日のことでした。長年のライバルだった両社が提携に踏み切った理由はどこにあったのでしょうか。

 記者会見で、日産自動車の内田誠社長は「(中国などの)新興メーカーが革新的な商品とビジネスモデルで参入し、圧倒的な価格競争力とスピードで市場を支配しようとしている。(ガソリン車の製造・販売で培われた)これまでの常識に縛られていたら太刀打ちできない」と語りました。

 ホンダの三部敏宏社長も「今は100年に1度の変革期。カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させるには両社の強みを持ち寄る必要があった」と説明。EV市場で挽回を図るために競合相手と手を結んだことを明らかにしました。

 両社とも提携の念頭にあるのは、世界のEV市場で急速に実績を伸ばしている中国勢への対応です。

 実際、中国の自動車産業は目覚ましい勢いで伸びています。

図:国際エネルギー機関(IEA)の「Global EV Outlook 2023」のデータ、BYDとテスラの公式サイトからフロントラインプレス作成
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 中国政府は、EVを軸にして世界市場をリードしようという「自動車強国」戦略を打ち出し、2010年から潤沢な補助金で業界を支援してきました。その結果は数字に現れています。中国自動車工業会のデータによると、2023年の生産台数は3016万台(前年比11.6%増)。3000万台超えを記録した初めての国となりました。

 輸出は好調です。2023年の輸出は計491万台(同57%増)を記録し、398万台だった日本を逆転。世界一の自動車輸出国となりました。

 こうした中国の自動車産業の拡大をけん引しているのが、中国BYDに代表されるEVです。