ACL出場を見据えた結果……
クラブライセンス制度が導入されたのは2013年からだ。Jリーグはホームページ上に、その目的を「サッカーの競技水準や施設的水準の持続的な向上」「クラブの経営安定化、財務能力・信頼性の向上」に集約されるとし、「サッカーがより魅力的で、観客やパートナーなどのステークホルダーに信頼されるスポーツを目指すことが示されている」と明記する。
発端は、アジアサッカー連盟(AFC)が同年シーズンより、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の参加資格を審査する基準として制度導入を決め、加盟する各協会に整備を通達したことにある。
これを受けて、日本サッカー協会とJリーグが国内向けのクラブライセンス制度を施行した。2023年にはJ2・甲府がACLの出場権を得たが、本拠地が大会の基準を満たさず、試合開催が認められなかったケースもある。
ただし、J2クラブがACL出場を見据え、通常シーズンの適正規模を無視したハコモノ整備が必要なのかは、やはり疑問だ。同じ観客数でも、大きなスタジアムは空席が目立つことで閑散とした雰囲気となり、印象も良くない。
Jリーグ開幕当時とは異なる事情
Jリーグが開幕した1993年には、全国に10クラブしかなかった。それ以前の国内のプロスポーツの本拠地は、大都市のプロ野球12球団しかなかったため、Jクラブのホームタウンは、地元自治体にとっても希少価値があった。
しかし、Jリーグの発展とともに各地にJクラブが誕生した現在、未参入なのは福井、三重、和歌山、島根の4県しかない。
そもそも、すべてのクラブがJ1優勝やACL進出を目指すわけではなく、それぞれの都市や市場の規模に合わせて、身の丈に合った運営をできればいいはずだ。J1に昇格をできなくても、予算規模にあったカテゴリーで、地元のサポーターに愛され続けることが理念だったはずだ。
それがいつしか、「地域密着」を都合のいいキーワードとして、地元や自治体に負担を強いる構造に様変わりしているのではないか。「税リーグ」などと揶揄(やゆ)されるゆえんでもある。
いまや地元にJクラブがあるからといって、自治体が前のめりでスタジアム整備に取り組んでくれるわけではない。
人口減に悩む地方都市において、身の丈に合った運営を持続できるスタジアムとは何か。Jリーグ、クラブ、自治体、地元企業、住民らを巻き込んだ議論が欠かせない。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。


