今年11月、なんと中東・南アジア地域で初となるプロ野球リーグがスタートする(写真:makoto.h/イメージマート)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
中東・南アジア地域で初となるプロ野球リーグ「ベースボール・ユナイテッド」が誕生した。
野球途上地域に突如として降って湧いた新興リーグだが、元メジャーのスター選手らも経営に参画するほか、日米の元プロ選手が“現役復帰”してプレーヤーに名前を連ねる。
まだまだベールに包まれた部分が多いが、潤沢なオイルマネーを背景にスポーツ界への進出が目覚ましい中東発のプロ野球リーグが、今後も世界的には拡大傾向にあるベースボール・ビジネスの世界にどんな新機軸を打ち出すことになるか。メジャーリーグや日本球界との親和性は生まれるのか。注目のリーグ戦は11月14日に幕を開ける。
「世界最大の野球マーケット」
「世界最大の野球マーケットになる」
リーグとパートナーシップを結ぶTBSスポーツの公式YouTubeチャンネルで、新リーグのキャッシュ・シェイク会長兼創業CEOは鼻息荒くこう語っている。
新リーグは中東でドバイ、アブダビに加え、南アジアのインドのムンバイ、パキスタンのカラチに拠点を置く4チームでスタートする。いずれも野球では“空白地帯”といえるが、競技の原型とされるクリケットが盛んな地域で、インドのクリケットプロリーグは億単位の年俸を稼ぐスター選手もいる。
「(新リーグ圏内の)10億人のクリケットファンは野球ファンになる可能性を秘めている」(シェイク氏、TBSの番組より)
つまり、野球人気に火が付けば、「世界最大のマーケット」という表現も決して誇大とはいえないかもしれない。
創業者のシェイク氏とは、どんな人物なのか。海外ビジネスの情報を発信する独立行政法人「日本貿易振興機構(JETRO)」の2023年10月10日付インタビュー記事によれば、シェイク氏は米国のテキサス州ヒューストン出身の起業家で、自身も大学まで野球をしていた経験者だ。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で10年間、マーケティングに従事し、ドバイにも1年間滞在。独立後はデジタルメディアのビジネスを起業し、事業を成功させ、スポーツ業界で新たにスタートアップを起業したというのが大まかなキャリアのようだ。
シェイク氏は記事の中で「野球は、北米や中米、東アジアで人気スポーツだが、他地域では未開拓のままだ。文化とビジネスを中東に広げたい」などと創業の思いを語り、ドバイに目を向けた背景には、スポーツ振興に熱心で、様々なスポーツが中東でマーケティングを始めていることもあるという。