砂漠の中に最新スタジアム!

 実際、中東地域では、サウジアラビアを中心にスポーツビジネスの世界へ進出が目覚ましい。同国のサッカーリーグでは、欧州のスター選手を破格の契約で獲得するほか、プロボクシングの興行なども盛んだ。

 12月にはサウジアラビア・リヤドで日本の世界4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥選手(大橋)や、前WBC・IBF統一バンタム級王者でスーパーバンタム級に転向した中谷潤人選手(M・T)らが試合を行う。高額賞金の新興のゴルフツアーも政府系ファンドが支援している。

 シェイク氏もインタビュー時には2025年にサウジアラビアへ進出し、リヤドで試合を企画したいと語っている。野球のマーケットとしては、インドなど一帯に約7000万人の既存の野球ファンがいるとし、高学歴で所得水準が高く、テレビやネット観戦にもお金を払う「プレミアム・ファン」だと強調する。

 インタビュー時に予定していた2024年に65試合のシーズンを行うなどの開催スケジュールは消化できなかったものの、2025年の開幕に向けては準備が整ってきた。

 TBSの番組によれば、すでにドバイの砂漠地帯に、メジャーの名門・ヤンキースと同じ形状の人工芝の真新しいスタジアムが完成し、2025年2月にはエキシビションマッチも行われた。

 周辺にはホテルも建ち、将来的にはゴルフ場やウオーターパークを整備する「スポーツパーク」構想もある。日本国内向けのプレスリリースによれば、リーグの経営陣にはヤンキースの守護神だったマリアノ・リベロ氏やメジャー通算700本塁打をマークしたアルバート・プホルス氏らが参画していることも明記する。

 開幕元年となる2025年のリーグ戦は11月14日に開幕し、全18試合のレギュラーシーズンを行い、12月12~14日に3試合制よるチャンピオンシップで年間王者を決める。

独自ルールでゲームがもっと劇的に

 興行面では、後発リーグとして盛り上げに工夫を凝らす。

 その一つが、独自のルールの採用だ。打撃専門の「DH」ならぬ、「Dランナー」と呼ばれる選手がベンチ入り。Dランナーの選手は1試合に何度でも代走として出場することができ、Dランナーと交代した選手のリエントリーも認められる。

 また、攻撃側の監督が「マネーボール」と宣言すると、1打席限定で試合球が黄色のボールとなり、打者が本塁打を放った場合のみ、得点が2倍になる。1試合に3回の宣言が認められる。満塁本塁打だと一挙8点を奪うことができるため、大差がついた試合の終盤でも、マネーボールで一気に逆転できる可能性がある。

 さらに、野球の世界的な普及や振興の開拓にも力を入れる方針を掲げ、競技が発展途上にある国や地域の選手を育成選手として獲得するルールを設ける。各チーム4人で計16人の契約が定められた「スーパー16」には、カメルーンやスリランカ、バングラデシュなどの選手がチームの一員としてプレーできる環境を用意した。