世界の野球市場に与える影響は?

 もちろん、興行面の不安要素は大きい。シェイク氏はJETROのインタビューで、リーグの収益源について、他のプロスポーツと同様に放映権やスポンサー、チケット、グッズ販売などを想定。飲食や観光、スポーツ用品などの産業に派生させ、新たな雇用創出や経済活性へつなげる構想も描くが、軌道に乗るかは未知数だ。

 一方で、KDマーケットインサイトの「世界の野球市場に関する調査レポート」では、野球市場は2024年から2033年の10年間にかけて年平均成長率7.74%、2033年末までに353億米ドル(約5兆4000億円)の 市場規模を創出すると予測する。

 もちろん、中心を担うのはメジャーリーグだろう。五輪への選手派遣に否定的だったが、2006年に第1回大会を開催したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の出場チームを増やすなど成長させ、英ロンドンでリーグの公式戦を開催するなど国外での新たなマーケット開拓に力を入れている。

 メジャーの市場規模は拡大を続け、米経済誌フォーブス(電子版)が25年1月に発表したメジャーリーグの2024年の総収入は121億ドル(約1兆8900億円)で過去最高だった。

 一方で、米国内での野球人気が、若者層を中心に頭打ちになりつつある危機感はあり、日本で公式戦を開催するなど“攻勢”をかけている。

中東・南アジアの野球文化を育てられるか

 新リーグが中東・南アジア地域で野球ファンを新たに開拓することは、世界的な野球普及をビジネスにつなげたいメジャーにとって、決して悪い話ではないだろう。現段階では親和性などは不透明だが、メジャーの動向も注目される。 

 そして、日本球界はどう向き合うのか。日本野球機構(NPB)は過去に韓国、台湾、中国とアジアシリーズなどを開催したことはあるが、継続的な国際戦略を十分には描けていない。

 大会が成長してきたWBCでは、日本は当初からトッププロを派遣してスポンサー獲得などで貢献したが、満足な収益を得られないというジレンマも抱える。走り出そうとしたばかりの新リーグに対して、静観か模索か——。動きはまだみえない。 

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。