スタンフォード大の佐々木麟太郎選手(写真:AP/アフロ)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
日本のプロ野球(NPB)のドラフト会議が10月23日に都内で開催される。今回のドラフトでは、岩手・花巻東高時代に通算140本塁打をマークして米国の名門・スタンフォード大へ進学した佐々木麟太郎選手(2年)も対象となり、ヤクルトなどが指名リストに入れていることが明らかになっている。
佐々木選手は来年7月のメジャーリーグ(MLB)のドラフト対象選手でもある。日米両方でドラフト対象となるのは今後も起こりうるケースだ。米国の大学へ進学して語学を磨いて勉学との両立を図りたい高校生にとっては魅力的だ。NPBが、メジャー志向が強いとされる佐々木選手を“深追い”したことで、新たな潮流の可能性を日本の高校生に広く浸透させた。
注目を集める佐々木麟太郎選手
週刊ベースボールが10月27日号で特集した「2025ドラフト番付最終版」。右の大型内野手、創価大の立石正広選手が「東の横綱」に配置され、「西の横綱」には最速158キロ右腕の石垣元気投手(健大高崎高)が名を連ねた。そんな番付の前頭筆頭に置かれたのが、米国の名門・スタンフォード大2年に在籍する佐々木麟太郎選手だ。
佐々木選手は父、洋監督が務め、メジャーで活躍する大谷翔平選手(ドジャース)や菊池雄星投手(エンゼルス)の出身でもある花巻東高時代には、高校通算140本塁打をマーク。身長184センチ、体重113キロで、23年の高校卒業時にもドラフト指名候補に挙がった大型スラッガーである。
注目された進路は、すぐに日本のプロへは進まず、NCAA(全米大学体育協会)の強豪で、学業レベルも世界トップクラスのスタンフォード大に決まった。文武両道が求められる環境に身を置き、2024年2月16日付の日刊スポーツの記事では同大学の監督が佐々木選手はフルスカラシップ(全額奨学金)の待遇で迎えられたことを明かしている。
今年5月までの1年目シーズンは、リーグ戦52試合すべてに先発出場し、打率2割6分9厘、7本塁打、41打点だった。
日本経済新聞の今年6月25日付インタビューでは、「想像していたよりもすごい環境で勉強と野球に打ち込み、充実した生活が送れた」と振り返った。学業面でも「英語を話す機会も増えて慣れていった」と語り、野球に関しては「ミーティングの内容も理解できるようになり、会話で困ることはない。将来的には経済学か科学技術社会論を専攻したいと思っている」と話している。リーグ戦終了後も、マサチューセッツ州で行われた米大学サマーリーグの最高峰「ケープコッドリーグ」に参加した。