単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」の千秋楽、指先にまで神経を研ぎ澄ませる公演中の羽生結弦さん©Echoes of Life Official

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

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 フィギュアスケート男子で五輪2連覇を成し遂げたプロスケーターの羽生結弦さんが手掛ける単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」が9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽公演を迎えた。

「生きる」「命」など壮大な哲学的なテーマと向き合い、自ら執筆したストーリーを氷上に表現したICE STORY第3弾は、昨年12月から埼玉、広島と続き、千葉公演を含めて3都市7公演を“完走”した。羽生さん本人も、千秋楽のフィナーレでは感極まるほどの達成感をにじませた。

 そんなこの日の公演で、筆者の脳裏に蘇ったのは、競技者時代さながらの“勝負師”としての姿だった。

アリーナを埋め尽くした8300人のファン

 満席の8300人で埋まったアリーナはいつものようにチケットは完売だった。そんな中で、メディア向けに用意された席を見て、身が引き締まった。プロスケーターに転向した羽生さんが出演したアイスストーリーやショーを通じて、これまでの中で最もリンクとの距離が近かったからだ。

 だからこそ、伝わってくるものがあった。それはプロスケーター転向後の音響や映像などのこだわり抜いた演出によって華やかさを身にまとった姿よりも、もっと本質的な部分である、本番直前まで最善を尽くそうとするあくなき執念と闘争心だった。