
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
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>>(前編から読む)羽生結弦さんが見せた執念と闘争心、単独公演で5年ぶりに蘇らせた伝説のプログラム…暗闇のリンクに浮かんだ姿とは
フィギュアスケート男子で五輪2連覇を成し遂げたプロスケーターの羽生結弦さんが手掛ける単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOUR」が9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽公演を迎えた。“表現者・羽生結弦”が「生きる」「命」など壮大な哲学的なテーマと向き合ったICE STORY第3弾は、千秋楽のフィナーレで羽生さん自身が思わず感極まるほどの達成感とともに幕を閉じた。
羽生さんはこの公演が開幕した昨年12月7日、30歳の誕生日を迎えていた。19歳で五輪金メダリストとなり、20代は世界歴代最高得点を連発し、史上初めて4回転ループを成功させ、4回転アクセルの「認定」も受けた。
プロスケーターとして羽ばたいた先にも常に未知の領域へ歩もうとする姿勢から、「孤独」や「孤高」というイメージがつきまとうが、千秋楽後の取材では「最近、孤独だとはあまり思っていないです」と打ち明けた。その真意は——。
「全魂を込めて滑った」
「皆さん、最終公演はいかがでしたか」
本編の全12プログラムを演じた羽生さんがマイクを手にリンクへ舞い戻ると、満員のアリーナが大歓声に包まれた。スクリーン上に映し出された羽生さんは感極まって、目を潤ませ、その声はわずかに震えていた。
「本当に僕の頭の中、気持ち、心臓の中、魂、そんなものを全て詰め込んだ。もうこれ以上ないなっていう出来で締めることができました。ちょっと放心状態です」
ともに公演を創り上げた関係者への感謝を丁寧に口にした後、観客席に向かって「(単独公演を)生み出し、見守ってくださり、本当にありがとうございました」と深々とお辞儀した。いつもの柔和な笑顔とは違う表情に、「全魂を込めて滑った」という達成感をにじませた。