中華民族の偉大な復興こそが宿願
2007年3月には習近平は上海市党委員会書記に就任したが、これが秋の党大会における出世につながった。
また、習中勲元副総理の長男であり、太子党に属していることも、共青団と一線を画すことになった。
2008年3月には、全人代で国家副主席に選出された。2009年12月には日本を訪問し、日本の先進技術を視察した。
2010年10月、第17期5中全会で党の中央軍事委員会副主席に選出され、胡錦濤後継の地位を確保した。
2012年11月15日、習近平は党中央委員会総書記、党中央軍事委員会主席に選出された。就任に際して、習近平は、民族への責任、人民への責任、党への責任の三つの責任を掲げた。
2012年12月、中央軍事委員会拡大会議で、習近平は、「われわれの執政の同志は、三つの事柄を終始心に留めておくべきだ。すなわち、5千年の優秀な文化を捨て去ってはならない。先達が確立した正しい政治制度を破壊してはならない。先祖が残してきた地盤を小さくしてはならない」と述べた。
つまり、習近平は、「①数千年の長きにわたる『中華』の歴史と文化への自尊心、及び、これを基礎とする被治者のナショナリズムの動員、②一党支配を中核とする既存の政治体制の維持、③清朝の領域半著を念頭に置いた国土の統一と領土の『失地回復』を、みずからの支配の要諦と見定めている」(鈴木隆『習近平研究』、東京大学出版会、2025年、384p)。
2049年の建国100周年までに、台湾を統一することが習近平の夢である。経済力、軍事力、金融力を高め、世界中に中国の利権を拡大しているのは、その夢を実現するためである。
以上のような「一つの中国」への習近平の思い入れを考えれば、高市発言の軽率さが悔やまれてならない。
高市首相は、台湾有事をめぐる国会答弁を事実上は撤回している。そのことを中国側に理解させる努力を続けていくしかない。




