10月17日、ホワイトハウスでゼレンスキー大統領と会談したトランプ大統領(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)
目次

 ウクライナ戦争を終結させるための様々な仲介努力は、これまでも続けられたが、アメリカは、クリスマスまでに停戦を実現させるために、新たな提案を行っている。トランプ大統領は、アメリカの提案にウクライナが数日以内に回答するように求めている。

コロコロ変わるアメリカの提案

 アメリカは、幾つかの和平案を提示してきたが、トランプは、その内容を意のままに変えるので、国際社会は何が彼の真意なのか測りかねてきた。

 8月15日には、トランプは、アラスカでプーチン大統領と首脳会談を行った。プーチンは、そのおかげで国際社会の表舞台に復帰できたし、停戦交渉を長引かせることもでき、制裁回避も実現できた。トランプの姿勢は極めてロシア寄りであったと言える。

 ところが、9月23日にニューヨークでゼレンスキーと会談した後には、「ウクライナは、ヨーロッパの支援があれば、元の姿を戦って勝ち取る状況にある」とSNSに投稿した。これは、ウクライナ寄りの発言である。

 領土の一部をロシアに割譲することを示唆していた従来の方針を転換したような内容である。

 10月17日、トランプはホワイトハウスでゼレンスキーと会談したが、ここでもまた方針を転換した。その前日にはプーチンと電話会談し、「現状の前線で停戦すること」を双方に求めたのである。このトランプの要求をいれれば、ロシアがウクライナ東南部を占領したままの停戦で、結局は領土の割譲になってしまう。

 プーチンは、ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)の領土割譲を要求し、その見返りとして、ザポリージャ州とヘルソン州の一部を放棄すると言っている。

12月2日、クレムリンを訪問した米米国のィトコフ特使とトランプ大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏と会談するプーチン大統領(写真:Sputnik/共同通信イメージズ)

 11月21日に、トランプはまた、28項目にわたる新たな案を示した。

 領土については、ウクライナは東部ドンバス地方の2州(ドネツク州、ルハンスク州)をロシアに割譲する、2014年にロシアが併合したクリミア半島でのロシア支配を認める。

 安全保障については、ウクライナはNATOに加盟しないことを憲法に明記する、ウクライナ軍の規模を60万人に制限する、NATO軍のウクライナ駐留は認めない、欧州各軍の戦闘機はポーランドに拠点を置く、ロシアがウクライナを再攻撃した場合はアメリカが軍事的対応を保証する。

 また、EUとの関係では、ウクライナはEU加盟の資格がある。

 ロシアの凍結資産については、1000億ドルをアメリカ主導のウクライナ復興への投資に使う、凍結資産の残りは米露の共同投資に活用する。

 経済制裁については、ロシアに対する制裁を解除し、ロシアをG7に加え、G8とする。

 さらに、和平合意後100日以内にウクライナ大統領選を実施する――。

 以上のような内容で、アメリカは11月27日を回答期限としたが、ウクライナは欧州諸国との協議の時間が必要だとして、延期を求め、トランプもこの期限は撤回した。