11月23日、ジュネーブで、アメリカ、ウクライナに英独仏を加えた会合が開かれた。アメリカからはルビオ国務長官とウィトコフ特使が参加した。
その結果、ロシア寄りの原案を修正し、「ウクライナの主権を完全に維持する」ことで合意をみた。
トランプ政権の中でも、ルビオ国務長官はウクライナや欧州の意見を尊重する立場であるが、ウィトコフ特使とトランプ女婿のクシュナーは、停戦を急ぐ立場で、そのためロシア寄りになっている。
12月2日、クレムリンでプーチン大統領と会談するウィトコフ特使とトランプ大統領の義理の息子クシュナー氏(写真:Sputnik/共同通信イメージズ)
ロシア側は、ウクライナとヨーロッパの主張を入れた修正案については、「非建設的」だとして、拒否している。とくにウクライナにNATOメンバー並みの支援をするという点は絶対に受け入れないとしている。
苦境のゼレンスキー
ゼレンスキーは、側近の汚職で政権基盤が揺らいでいる。11月28日、政権ナンバー2のイェルマーク大統領府長官が汚職対策機関の捜査を受け、辞任した。イェルマークは実質的な副大統領であり、政権運営、人事などほとんど全てを取り仕切ってきた。彼が、ウクライナ停戦交渉の主軸であり、それが欠けることは、交渉の行方にも暗い影を投げかける。
ロシアと並んでウクライナも汚職大国であり、戦争中でも汚職が横行している。
しかし、最側近を解任せざるをえない状況は、ゼレンスキーにとっては、大打撃である。国営原子力企業を巡る贈収賄事件であるが、同じ件で、ハルシチェンコ司法相とフリンチュク・エネルギー相も辞任した。
ゼレンスキー政権への国民の支持が減退し、政権が不安定になれば、前線の兵士の士気にも影響する。
戦況は、ロシア有利に展開しており、トランプは、「ウクライナは負けている」と明言している。
それに加えて、汚職問題で弱体化しているゼレンスキーに対して、トランプはウクライナに不利な停戦案を飲ませるように圧力を強めている。