EVだから、ではなく「かわいい」「かっこいい」が響く

 2020年春以降、コロナ禍によって自動車産業界は大きなダメージを受けると同時に、ユーザーのライフスタイルへの意識が大きく変わった。同じ時期に、ESG投資の伸びが鈍化し、EVシフトへの過剰投資に対する軌道修正を発表する自動車関連企業が続出した。

 EVの需要も、新しいトレンドをいち早く取り入れるアーリーアダプター層の需要が一巡し、マスマーケットに需要が広まるきっかけを失いかけ、「EVは踊り場」という表現が欧米日のメディアやSNSで目立つようになった。

 こうした世の中の変化は、結果的にID.Buzzの商品価値を引き上げたのではないだろうか。

 つまり、「かわいい」「かっこいい」「懐かしい」といった感情的なインパクトを優先して、ID.Buzzを受け入れる人が増えていく可能性があるのだ。 

「ID.Buzz」の前席(写真:筆者撮影)
「ID.Buzz」の後部(写真:筆者撮影)

 ただし、価格が800万円台後半から900万円台後半と高額であるため、Type2のような庶民向けという商品ではない。

 それでも、見た目のインパクトに惹かれたり、EVであることに先進性を感じたりして購入する人は、日本でもけっこう多いのではないだろうか。事実、フォルクスワーゲンジャパンによれば、今年中の納入予定分のオーダーがかなり多く入っているようだ。

高級ミニバンユーザーのEVシフト第1弾になれるか

 高級ミニバンユーザー、特にトヨタの「アルファード」や「ヴェルファイア」、もしくは日系や欧州系の大型SUVユーザーにとっても、EVシフトの第1弾としてID.Buzzを検討しても不思議ではない。

 いずれにしても、ID.Buzzが日本のミニバン市場、EV市場、そして輸入車市場に刺激を与えていることは間違いない。