欧州で誕生する小型EVの新たな車両規定「M1E」の影響力はいかに。M1Eに属する可能性のあるクルマの一つが、ホンダの「Super-ONE プロトタイプ」だ(写真:筆者撮影)
最近、海外で「軽自動車」の導入に関するニュースが相次いだ。欧州では、新しい小型EV(電気自動車)の車両規定が議論され、その中で軽自動車の車両規定を参考にしているとの報道があったからだ。アメリカではトランプ大統領が12月5日に、「とても小さなクルマの生産を承認」したとSNSで発信。併せて、トランプ大統領は日本で見た光景についても触れていることから、「とても小さなクルマ」が軽自動車ではないかという見方が広がった。こうした海外での動きは、日本市場にどう影響するのかを考えてみた。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
まずは、欧州の動きについて。
欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会は12月16日、将来に向けた自動車の環境政策について発表した。
これまで掲げてきた「2035年までに欧州域内で新たに発売する乗用車と小型商用車の100%をEVまたは燃料電池車」という目標を事実上撤回し、「EVまたは燃料電池車」のほかに、ハイブリッド車や次世代燃料を使う内燃機関車を含めるとした。
自動車産業から、市場の実情を踏まえた修正が必要だとの声を受けた形だ。
今回の発表の中では「スモール・アフォーダブル・カー」として、全長4.2m以下の小型EVを「M1E」という新しい車両規定として新設することも明らかになった。
特徴は、CO2削減に対して企業に付与されるクレジットが、従来の1.3倍に引き上げられること。これにより、欧州委員会では自動車メーカーのEV参入に対する意欲がより高まることを期待している。
欧州ではすでに「クワドリシクル」という超小型モビリティが量産されている。代表的なモデルが、シトロエンの「Ami」で、フランスでは14歳以上であれば免許は不要で運転できる。
一方、M1Eは一般乗用車の枠組みに属する。
フランスでは、ルノー「5(サンク)」などがすでに小型EVを発売しており、これらがM1Eとして認定されるかもしれない。
日本メーカーでは、ホンダがジャパンモビリティショー2025で公開した「Super-ONE プロトタイプ」がM1Eに属することになるかもしれない。軽EVの「N-ONE e:」をベースに仕立てたハイパフォーマンスEVで、2026年には量産される。ホンダは2025年7月、英国の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で、観衆を前に、Super-ONE プロトタイプの走りを披露している。