11年ぶりにフルモデルチェンジをした新型「ムーヴ」に、都内で試乗した(写真:筆者撮影)

ダイハツが6月5日、新型「ムーヴ」を全国一斉に発売した。一連の型式認証不正問題の影響で、同社が新車を国内市場に導入するのは実に3年ぶりのことになる。当初の計画では、ムーヴは2023年にフルモデルチェンジして発売される予定だったが、そこから2年も遅れての登場となった。都内で開催された報道陣向けの試乗会で筆者が感じた「驚き」を紹介したい。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

異例の11年ぶりのフルモデルチェンジ

 ムーヴは1995年の初代誕生以来、累計販売台数340万台を誇る、ダイハツの基幹モデル。

 だが2010年代以降、軽自動車の主流はダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」、そしてホンダ「N-BOX」という、(全高が高く室内空間の広い)スーパーハイト系にシフトしたことで、ムーヴやスズキの「ワゴンR」など、ハイト系の存在感がやや薄れた印象があった。

 そうした時代の変化に加えて、型式認証の不正問題が絡んだため、先代から今回の第7世代へのフルモデルチェンジまで、実に11年も要した。初代〜第2世代(3年間)、第2世代〜第3世代(4年間)、第3世代〜第4世代(4年間)、第4世代〜第5世代(4年間)、第5世代〜第6世代(4年間)と比べてあまりにも長い。

 となれば、ユーザーや販売店から新型ムーヴへの期待は高まる反面、ダイハツにとっては新車開発におけるプレッシャーが大きいのは当然である。

「実にバランスが良いクルマ」

 試乗した結果を先にお伝えすると、「実にバランスが良いクルマ」という印象だ。

 これは、様々な要因が「ほどほど」とか「そこそこ」という意味でのバランスではない。市場の変化を的確に捉えた上で、ダイハツの持つ開発資源と知見をフル活用している、という意味である。

 そうした中でも、際立っているのが乗り心地の良さだ。