
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
普段使うクルマも、もうすぐ完全自動運転になる。だから、自宅からクルマで外出して夕食でお酒を飲んでも、帰りは自動運転モードで楽々帰宅できる。
そんなイメージを持つ人がいるかもしれない。
2010年代半ば頃から、世界的に自動運転を実用化する動きが加速し、日本でも自動運転に関わる様々な実証試験が行われてきた。そうした様子はネットニュースやテレビ番組で紹介されることが増えている。
また、最新モデルでは両手を離した状態で高速道路を走行できる様子がテレビCMで流れたことも、「完全自動運転の実現は目前」というイメージを消費者に対して植え付けたと言えるだろう。
ところが、実際には自家用車の完全自動運転実用化のめどは、現時点で立っていないのが実情だ。その理由を探ってみたい。
ホンダの言い分
ホンダは都内で5月20日、「2025ビジネスアップデート説明会」を開催した。その中で、これまでどおりに「電動化」と「知能化」に重点を置くとした上で、電動化については欧米でのEVシフト鈍化、トランプ関税の影響、そして中国での激しい価格競争などを背景に軌道修正を行うとした。
具体的には、2030年時点のグローバルでのEV販売比率が、これまでの目標だった30%を下回るとした。
一方、知能化について三部敏宏社長が強調したのが、「次世代ADAS」を上位モデルから標準装備するという点だ。2027年頃から北米や日本で投入予定のEVや新開発ハイブリッド「次世代e:HEV」の主力ラインアップに幅広く適用するとした。

ADASとは、アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム(高度運転支援システム)を指す。ホンダは記者会見で、次世代ADASを「一般道や高速道の境なく、目的地までの全経路でアクセルやハンドル操作を高度に支援」と定義した。プレゼンテーションで示された図表によれば、駐車場で、市街地、幹線道、高速道という4つの領域で、境なく高度なADASが使えるという。
そう聞くと「これって、完全自動運転のことなのか?」と思う人が少なくないだろう。
だが、あくまでも運転支援であり、自動運転ではない。