
(井上 久男:ジャーナリスト)
日産自動車は27日、3月31日付で退任した内田誠社長、坂本秀行副社長、星野朝子副社長、中畔邦雄副社長の4人の元執行役に対し、計6億4600万円の「退任に伴う報酬(退職慰労金)」を支払ったことを明らかにした。この日公表した株主総会の招集通知内で記載した役員報酬に関する項目で開示した。
個別にいくら支払ったかは開示していない。有価証券報告書で個別支給額はいずれ開示されるだろうが、1人平均で1億5000万円を超える額になる。
日産は25年3月期決算で6708億円の最終赤字に転落。業績不振に伴い、7工場を閉鎖し、全社員の15%に当たる2万人の人員を削減する。また国内では18年ぶりに希望退職を実施する。
6億4600万円が、大リストラをしている企業が元役員に対して支払う退職慰労金として妥当なものか、株主や世間が大きく注目するだろう。
27日は日産が社内に対して希望退職の説明会を開いた日でもある。ある社員は「社員には条件の良くない希望退職を募りながら、これまで億単位の役員報酬を得てきた人にさらに億単位の退職慰労金を支払うことに納得がいかない」と語った。
別の社員は「退任した4人には大きな経営責任がある。会社の制度の中で支払われたものだとしても、返上するのが筋ではないか」と訴えた。
ちなみに4氏に対して過去どれくらいの役員報酬が支払われていたのかを見ると、たとえば23年度は内田氏が6億5700万円、坂本氏が1億9000万円、星野、中畔両氏がともに1億6900万円となっている。