実績出せなくても巨額報酬の「役員天国」

 この4氏は、多額の役員報酬を得ながら、改革を先送りして、日産を経営危機に陥れた「戦犯」だと筆者は感じている。「内田氏は社長として意思決定が遅く、坂本氏は生産担当として過剰生産能力の対策を先送りし、開発担当の中畔氏は売れるクルマを出せなかった。星野氏はブランド戦略の責任者でありながら、日産車のブランド力が低下して値引きしないと売れないブランドになったことに抜本的な対策が打てなかった」と、日産元役員は指摘する。

大リストラを実施する日産は本社ビルの売却も検討している(写真:共同通信社)

 実績を出せない役員が現役時代は高額報酬を得て、退任時にはまた高額の退職慰労金を得る実態を見ていると、日産はまさに「役員天国」と言えるだろう。

 今回に限らず、日産は退任する役員に巨額の退職慰労金を払ってきた。

 たとえば、23年に最高執行責任者(COO)を退任した在任期間わずか約4年のアシュワニ・グプタ氏には5億8200万円が支払われた。「内田氏と対立して退任に追い込まれたグプタ氏に対しては口止め料が加算されているのではないか」(日産幹部)と見る向きもある。

 退職慰労金制度がある企業は一定の計算式に基づき、さらに競業他社への転職を一定期間禁じるなどの条件付きで支払っており、日産も同様の対応をしていると見られるが、大赤字に陥り、大規模な人員削減をしている日産の置かれた現状からすれば、巨額の退職慰労金を支払うことに対して納得感がない。