何をもって「政治的コンテンツ」とするのか

 もちろん、何をもって「政治的コンテンツ」とするか、誰がそれを判断するのか、表現の自由との兼ね合いなど、収益化停止には慎重な議論が必要な点も多い。

 しかし、経済的インセンティブが情報流通の量と質、ひいては民主主義の健全性に影響を与えうるというリスクは、真剣に認識されるべきだろう。

 本来であれば、こうした新たな課題に対しては、まず十分な調査研究を行い、エビデンスに基づいて対策を検討していくべきである。

 しかし、日本の場合、報道機関には、プラットフォーム内部のデータ分析などを伴うような調査報道を行う体力やノウハウが十分とは言えず、大学などの研究機関には、大規模な調査を行うための予算やリソースが不足しているのが実情だ。

 そうなると、やはり監督官庁である総務省が、より主体的に調査研究を進め、対策を検討していく必要があるはずだ。

 そもそも、プラットフォーム事業者がどのようなアルゴリズムで情報を表示・推薦しているのか、どのような基準でコンテンツモデレーション(内容の監視・削除など)を行っているのかといった内実は、外部からは見えにくく、十分に公開されているとは言えない。

 EUなどでは、デジタルサービス法等により、プラットフォーム事業者に対してアルゴリズムの透明性確保やリスク評価・軽減措置などを義務付ける動きが進んでいる。

 日本においても、昨年の情報流通プラットフォーム対処法などを通じて、プラットフォーム運営の透明化・公正化に向けた議論と対策は進められているものの、アルゴリズムの詳細開示など、踏み込んだ規制については、事業者の競争上の秘密保護との兼ね合いもあり、まだ道半ばである。

 また「収益化オフ」に事業者の協力は得られる可能性があるのか、またジャーナリストやネットメディアの売上に影響を与える可能性もあるし、無償コンテンツも含めてコンテンツモデレーション厳格化に進む可能性や、政治的挑戦者の工夫の裁量を狭め阻害する可能性もある。

 SNSや動画の得意な政党と不得手な政党に分かれることから、選挙制度改革に必要な政治的意思決定も短期的にはそれほど容易ではないだろう。

 こうした課題を踏まえつつ、SNS時代の選挙と民主主義のあり方を健全に保つために、そして、そのあり方について、プラットフォーム事業者、政府、研究機関、メディア等が調査に基づく実質的な議論と対策を進めていくことが急務となっている。