合成着色料を段階的に禁止することを記者会見で表明したケネディ保健福祉省長官=4月22日、ワシントン(写真:共同通信社)

トランプ米大統領の就任から4月29日で100日を迎えたが、高関税政策による経済の混乱などで支持率の退潮が鮮明になっている。連邦政府の職員を大量解雇し、政権の内部対立も露呈するなど混沌とした状況が続く。そんな中、保健福祉省長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の人気が高いという。名門ケネディ家の“異端児”で「ワクチン懐疑派」としても知られる長官の人気の背景に何があるのか。米国の社会問題に詳しいジャーナリストが解説する。

(猪瀬 聖:ジャーナリスト)

メディアの批判とは逆に群を抜いて高い人気

 米トランプ政権の保健福祉省長官、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が政権内で異彩を放っている。傍若無人に振る舞うトランプ大統領と主要閣僚らへの国民からの批判が強まるなか、高い好感度を享受しているのだ。人気の背景には、あるママたちの存在があった。

「自閉症が急増しているのはワクチンのせい」。ケネディ氏は長官就任前からこう繰り返してきた。本人は「ワクチン否定派ではない」と釈明するが、4月10日には、自閉症急増の原因究明のため保健福祉省が大がかりな調査に乗り出したことを明らかにした。

 ワクチンを巡るこうしたケネディ氏の言動に対し、米主要メディアの多くは「ワクチンと自閉症を結びつける科学的根拠はない」といった専門家の意見を紹介しながら、連日のように同氏への批判を繰り広げている。

 しかし、メディアの批判的な論調とは対照的に、ケネディ氏を支持する米国民は多い。

 ハーバード大学と調査会社ハリス・ポールによる最新の世論調査では、ケネディ長官に対する印象を「非常に好意的」または「好意的」と答えた人は、合わせて44%に上った。トランプ政権内ではトランプ大統領の46%に次ぐ高さだ。調査は4月9日から10日にかけて行われた。

 一方、ケネディ氏に対する印象を「非常に好意的でない」または「好意的でない」と答えた人は37%と比較的低く、その結果、「非常に好意的」「好意的」から「非常に好意的でない」「好意的でない」を引いた正味の好意度は7%。それに次ぐのはバンス副大統領らの2%で、ケネディ氏の好意度が群を抜いて高いことがわかる。

 ちなみにトランプ大統領の正味の好意度は、「トランプ嫌い」が多いことが響いてマイナス1%だった。