
トランプ大統領の当選を後押ししたリバタリアン、投資家ピーター・ティール氏は1月10日に「A time for truth and reconciliation」(真実と和解の時)という論説を英経済紙フィナンシャル・タイムズに寄稿した。論旨は「新大統領はこれまで政府が公表していなかった事実を(インターネットを通して)公表し、民衆と政府の“和解”を目指すべきだ」というもの。実際、トランプ大統領は就任直後から積極的に情報公開を進める大統領令にサインしている。日本でも広がる「陰謀論」と「メディア不信」の本質、そして情報開示を求めたティールの真意を『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』著者の橘玲氏に解説してもらう。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
>>(前編から読む)新型コロナ、ケネディ暗殺…「陰謀論」はなぜ広がる? ピーター・ティール氏がトランプ大統領に情報開示を求めたワケ
新型コロナウイルスの起源で論争が起きる理由
橘玲氏(以下、敬称略):それでもウイルスの起源で論争が起きるのは、おそらくは中国に対する情報戦として、米エネルギー省やFBI、さらには下院小委員会までが、根拠を示さずに「武漢研究所説」を主張しているからです。その背景にあるのは、ランド・ポールが指摘するように、「アメリカの資金援助で、武漢ウイルス研究所がどのような機能獲得実験を行ったか」の真相が明らかになっていないことです。

ティールは寄稿の中で、「新型コロナウイルスに関する自由な議論が封じられている状況を、このまま放置するわけにはいかない。そもそも、なぜNIHは武漢ウイルス研究所に血税を投じたのかを、NIAID前所長であるファウチは説明する義務がある」と書いています。事実の隠蔽が陰謀論の温床になっているのですから、これは筋が通っています。
アメリカ政府が事実を公表できないのは、“陰謀論者”がいうように、コロナ禍を引き起こしたのが生物兵器だったからかもしれません。この主張をもっとも強く唱えているのが、トランプ政権で保健福祉長官(厚生長官)に就任した“反ワクチン派”のロバート・ケネディ・ジュニアで、政府内にもしそのような文書があれば、歴史的な政治成果になりますから、公表しないわけがない。