シャンパンをめぐるトランプ大統領の投稿にSNSでは嘲笑、ワイン業界には困惑が広がる

 次々と発動される「トランプ関税」が報復の連鎖を生んでいる。欧州連合(EU)は3月12日、アメリカによる鉄鋼、アルミニウムへの25%追加関税に反発し、米国産ウイスキーなどの関税を4月から引き上げる計画を発表(3月21日に先延ばしを表明)。EUの対抗措置を受け、トランプ氏は欧州産酒類への高関税で応酬すると威圧した。このSNS投稿に、米国内では嘲笑と困惑が広まる。世界の食事情や米国の社会問題に詳しいジャーナリストが解説する。

(猪瀬 聖:ジャーナリスト)

トランプ投稿に「シャンパンはフランス産」と相次ぐ指摘

 トランプ米大統領が3月13日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、欧州連合(EU)加盟国から輸入するワインなどのアルコール飲料に200%の関税を課すと投稿したことが、欧米で大きなニュースになっている。

 ワインは、海外の要人を招いての晩餐会などで必ず振る舞われることからもわかるように、欧米の文化に深く根ざした飲み物だ。庶民にとっても非常に身近なお酒と言っていい。もちろん産業としても大きいだけに、税率の引き上げで起こり得る経済的な影響も強く懸念されている。騒ぐのも当然だ。

 そうしたなか、トランプ大統領が投稿の最後に付け加えた「(200%の課税は)米国のワインやシャンパンビジネスにとって素晴らしいことだ」(This will be great for the Wine and Champagne businesses in the U.S.)という一文が同氏の無知・無教養ぶりを示しているとして、ちょっとした話題になっている。

 欧州産ワインに高率の関税を課せば、米国内で流通するフランスワインやイタリアワインの価格が高騰して買う人が減るので、米国のワイン生産者が大きな恩恵を受ける。トランプ大統領はそういう意味で言ったに違いない。

 しかし、ワインはともかくシャンパンに関しては、米国内に生産者はいない。シャンパンの輸入価格が高騰しても誰も恩恵を受けないのだ。

 経済誌フォーチュンも投稿の最後の一文を取り上げ、「トランプ氏の見解は間違っている」と誤りを指摘した。

 掲示板型SNSのレディットには「私はワインに詳しくないが、本物のシャンパンはフランス産だけで、アメリカではけっしてつくられていないことは知っている」「教育はお金では買えないことがわかった」など、トランプ大統領を揶揄する投稿が相次いだ。

 マサチューセッツ州の有力紙ボストン・グローブのフェイスブックにも、「シャンパンはフランスでしかつくられていないのに、どうして米国のシャンパンビジネスにとって良いのかわからない。なんて間抜けな奴だ」とトランプ大統領を小馬鹿にする投稿があり、300件近い「いいね」がついた。