トランプ大統領による問題のSNS投稿

報復関税受ければワインビジネス崩壊の危機

 実は、昔は米国でもシャンパンはつくられていた。正確に言えば、米国産のスパークリングワインを勝手に「シャンパン」として売っていたのだ。シャンパンだけでなく、当時は、米国産ワインに「シャブリ」や「ブルゴーニュ」などフランスの有名産地の名前を付けて販売するビジネスが横行していた。イタリアやスペインの有名産地の名前も使われていたようだ。

 これを知的財産権保護の観点から問題視したEUが米政府と交渉。2005年、米国産ワインに欧州の有名産地の名前を使用しないことで合意した。

 ただし、例外規定も設けられた。2006年3月以前に米国内で発売されたワインで、すでにシャンパンの名称を使用していた商品については、産地名を併記するとの条件付きで引き続き名称の使用を認めた。そのため、例えばコーベル社のスパークリングワインは今も「カリフォルニア・シャンパン」として売られている。

 ワインに興味のない人なら、この事実を知らない人も多いに違いない。トランプ大統領はアルコール類を口にしないので、知らなくても当然との擁護論もあるかもしれない。しかし、一国の大統領という立場上、誤った軽々しい発言は揶揄や批判の対象になっても仕方がない。

 では、シャンパンの話はさて置き、EU産ワインへの200%課税は、米国のワインビジネスにとっては素晴らしいことなのだろうか。

 これも必ずしもそうとは言えない。それどころか、米国のワインビジネスを崩壊させかねない危険性をはらんでいる。

 先日、プロモーションのために来日したカリフォルニアワイン協会の幹部に、ワインの関税が引き上げられたらカリフォルニアワインにとっては大きなビジネスチャンスではないかと聞いたところ、浮かない表情で「報復関税が怖い」と述べた。

 米国はイタリア、フランス、スペインに次ぐ世界4位のワイン生産国で輸出量も多い。カリフォルニア州は米国の全ワイン生産量の約8割を占め、州単独でも世界4位のワイン産地だ。報復関税を受けたら、その影響はけっして小さくない。