ロバート・ケネディ・ジュニア氏と握手するドナルド・トランプ次期大統領(8月23日アリゾナ州で、写真:AP/アフロ)

ケネディ家汚すと罵倒された反乱分子

 組織犯罪の撲滅、労働組合の不正を暴いたロバート・F・ケネディ司法長官(享年42)の亡霊(魂)が、56年ぶりにワシントンに舞い戻ってきた。

 長男ロバ-ト・F・ケネディ・ジュニア(70)がドナルド・トランプ第47代大統領の保健福祉長官*1として「腐敗し切ったFDA(米医療食品局)と大医薬品企業」との相利共生関係にメスを入れると乗り込んでくる。

*1=米国の保健福祉長官(Secretary of Health and Human Service)は日本の厚生労働大臣に当たる。その所管は消費者保護、食品安全、水質循環、科学技術調査・研究、感染症危機管理など日本の6大臣が担当する政策分野での権限を有している。職員8万人の大組織だ。

 特に、FDAのほか米国立衛生研究所(NIH)、米疾患対策予防センター(CDCP)、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)などの不透明な管理や民間への天下りなど官民癒着についてはこれまで何度となく指摘されてきた。

 しかし、誰も手をつけようとはしてこなかった。

 ケネディ氏は、コロナ・ウイルス拡散防止で絶対権限を振るったアンソニー・ファウチNIAID前所長(83歳、2022年に退官)が年収48万ドル(約7400万円)と、大統領よりも高額だったことや38年間の要職期間中に巨額の資産を蓄えていた事実などを突き止め批判していた。

Dr. Anthony Fauci is paid more than the president — here's how much he earns as he prepares to retire from public service 

 それをトランプ氏の絶対的な支持を得て実行に移す。

 ケネディ氏は、水質汚染阻止の弁護士としてこれまで「汚染企業」や官僚と法廷闘争を繰り広げ、近年はコロナ・ウイルスのワクチン2と自閉症との因果関係、ハンバーガーやフライドチキンのチェーン店で販売されている高カロリー低栄養フード規制強化など消費者目線での社会の不条理に挑戦してきた。

*2=ケネディ氏は、コロナ・ワクチンについては、バイデン政権が認可しているヒドロキシクロキンやエリテマトーデスといった治療剤を「インチキ薬」と断定、即時認可を取り消すよう警告している。

 かつて一世を風靡した反公害消費者運動家のラルフ・ネーダー氏と相通ずる行動で、同氏とも昵懇の仲だった。

 大統領選では当初、民主党から立候補、「泡沫候補」と揶揄され、ジョー・バイデン大統領を支持する兄弟姉妹親類縁者からは「絶縁」された。

 その後、無所属としてキャンペーンを続け、8月、立候補を断念し、保健福祉面での政策合意ができたトランプ氏への支持を表明していた。