
「米国を再び健康に」掲げ、大手食品企業に警告
インスタグラムで200万人以上のフォロワーを持つ「フード・ベイブ」こと活動家のヴァニ・ハリ氏も、もともと民主党支持者だが、今やトランプ政権に期待を寄せるクランチー・マムの一人だ。同氏はSNSなどを使い食品企業を攻撃することでフォロワー数を増やしてきた。
3月中旬には、ケネディ長官が主宰した非公開の円卓会議に他のクランチー・マムと共に招かれた。報道によると、ハリ氏は同席したトランプ政権の閣僚らに、欧州連合(EU)が安全上の理由から禁止している食品添加物を米国も禁止するよう訴え、ケネディ氏も同調したという。
会議終了後、ホワイトハウスは参加者が出演する政策PR動画を公開した。動画では、クランチー・マムは「MAHA(マハ)マム」と紹介されている。MAHAは大統領選を戦った時のケネディ氏のスローガン「Make America Healthy Again(米国を再び健康に)」の略語だ。
ケネディ氏がクランチー・マムに支持されるのは政治的な価値観や主義主張が近いからだ。加えて実行力も高く評価されている。
ケネディ氏はもともと市民派弁護士として大企業と戦ってきた。発がん性の疑いが指摘されている除草剤「ラウンドアップ」を巡る裁判では、ラウンドアップのせいで末期がんを患ったと主張する男性の代理人を務め、2018年、開発元のモンサントに対する懲罰的賠償金を含む2億8900万ドル(当時の為替相場で約320億円)の支払い評決を勝ち取った。裁判は今も全米各地で続く一連の巨額ラウンドアップ訴訟の先駆けとなった。
その姿勢は政権入りしてからもまったくブレない。
就任から約1カ月経った3月中旬には、ペプシコやWKケロッグ、クラフト・ハインツなど米国を代表する大手食品企業のトップらを保健福祉省内に集めて、合成着色料の使用を止めるよう要請。できない場合は権力の行使も辞さないと警告した。
ロバート・F・ケネディ元司法長官を父に持ち、ジョン・F・ケネディ元大統領を伯父に持つケネディ氏は、民主党のシンボル的存在だった。それだけに、よりによってトランプ政権入りした時には「ケネディ家の大スキャンダル」と報じられた。
そんなケネディ家の異端児が今や、トランプ政権の人気を下支えするかのような存在となっている。トランプ大統領の信頼も厚いようだ。毀誉褒貶の激しいトランプ大統領だが、自身もかなりの異端児なので、異端児同士、馬が合うのかもしれない。