トランプ前大統領と握手するロバート・ケネディ・ジュニア氏(左、8月23日アリゾナ州で、写真:AP/アフロ)

トランプの軍門に下るほか選択肢なし

 11月の米大統領選に無所属で出馬していた「第3の候補」ロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)が8月23日、大統領選からの撤退を表明した。

 返す刀で共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)への支持を打ち出した。

 ケネディ氏は1963年に暗殺された民主党のジョン・F・ケネディ元大統領の甥。父のロバート・ケネディ氏はケネディ政権で司法長官を務め、68年の大統領選に立候補し、選挙戦中に暗殺された。

 環境問題に取り組んできた弁護士で、大企業や地方自治体と公害訴訟で争ってきたが、政治経験はなかった。

 少年時代、そして成人になってもヘロインやコカインの常習犯で逮捕されたこともある「ケネディ一族のブラック・シープ(面汚し)」だった。

 選挙戦では、巨大製薬会社に支配されないヘルス・ケアの実現や戦争への反対を訴える一方、ワクチン接種やバイデン政権のコロナ感染対策に反対、トランプ氏とはいくつかの政策で意気投合していた。

 当初、民主党大統領候補として出馬したが、昨年10月、無所属での立候補に切り替えた。

「ケネディ」という高い知名度を武器に、トランプ氏と民主党のジョー・バイデン大統領(81)の双方に批判的な「ダブル・ヘイター」層に浸透。

 各種世論調査で、今年前半までは15%程度の支持率を確保し、存在感を示していた。しかし、バイデン氏撤退で後継候補となったカマラ・ハリス氏に支持層の一部を奪われて、5%前後に落ち込んだ。

 一方で、無所属候補として全米50州全部の候補者名簿に自らの名前を掲載するには、各州で多くの推薦人が必要で多額の登録費用もかかる。

 全50州となれば、推薦人100万人規模の署名が必要になる。このため、候補者登録は難航し、ケネディ氏は不安定なまま、選挙キャンペーンを続けてきた。

 米主流メディアからも「泡沫候補」扱いでほとんど無視され、「ハリス旋風」をまともに受けて支持率が急減。

 その影響を受けて、「ケネディ氏に先行投資し、政治資金を出してきたシリコンバレーの一部起業家も手を引き始めた」(主要メディア政治記者)。

 そうした中で、ケネディ氏は、引き際を考えていた。つまり、「振り上げた拳」の下ろし方を考えるに至ったようだ。