ペンシルベニア州遊説中に夫のダグラス・エムホフ氏(右)と副大統領候補のティム・ウォルズ・ミネソタ州知事(左)とともにコンビニエンスストアを訪れたカマラ・ハリス氏(8月18日、写真:AP/アフロ)

バイデン去って、生き返った民主党

 米民主党の全国大会が8月19日、中西部イリノイ州シカゴで開幕した。

 22日までの期間中、カマラ・ハリス副大統領(59)が正式に党大統領候補に指名され、指名受諾演説を行い、国家像や内外政策を打ち出す。

 共和党大統領候補に指名されているドナルド・トランプ前大統領(78)との100日間の本格的な舌戦が、いよいよ繰り広げられる。

 ついこの間まで高齢問題を抱えるジョー・バイデン大統領という“お荷物”を抱えて二進も三進も行かなかった民主党は、バイデン氏が候補から降りたことで風穴が開いた。

 しかもバイデン氏が間髪を入れず、後継候補にハリス氏を支持したことで党内は一変、一致団結し「おんぼろ神輿」を担いだ。

(ハリス氏が後継候補になるまで「傲慢だ」「経験がない」と嘯いていた連中が急にハリス支持に回った。筆者などには、1984年の自民党総裁選で中曽根康弘嫌いだった旧田中派が実力者・金丸信氏の「一致団結で『おんぼろ神輿』を担ぐのがわが派閥だ」と発した鶴の一声で、中曽根支持に回ったのを彷彿させる)

 全米を覆っていた「ダブル・ヘイター・ムード」(Double Hater Mood=バイデン、トランプどちらも嫌いな空気)はかき消されて、報道するメディアにもなんとなく陽気さが戻ってきた。

 メディアが息づけば、世論もついてくる。

 あれよ、あれよという間にハリス氏は支持率でトランプ氏に追いつき、追い越す。メディアは「カマラ現象」「ハリス・ブーム」と書きたてた。

 特に、若者が愛読するオンライン御三家のティックトック、インスタグラム、ユーチューブはハリス氏を「ロック・スター」並みの扱いにしてしまい、「ハリスは突然ポップ・カルチャー界のクールな存在になってしまった」(ロバート・シュルム・南カリフォルニア大学教授)

mercurynews.com/the-kamalanomenon-will-pop-culture-stardom-propel-harris-to-the-white-house/

 こういった「カマラ現象」は、現場で見ていないと分からない。世論調査だけ見ていたのでは分からない。若者カルチャーに疎い向きには全く分からないだろう。

 民主党全国大会は、(当初からそのように計画していたわけではないが)絶好のタイミングで開幕したのである。