解禁から10年超で迎えた「真のネット選挙元年」
これらの動きと並行して、日本においても報道やマスメディアの影響力低下が指摘されるようになった。新聞の発行部数、テレビの視聴時間は長期的に減少傾向にある。
メディアの主役はテレビからインターネットへと移行している。特に若年層においてはその傾向が顕著で、情報流通の主役は、名実ともにインターネット、特にSNSへとシフトしたと言える。
インターネット選挙運動解禁から10年近くの歳月が流れた。そして2024年、日本国内で行われた複数の選挙において、これまでの「選挙の常識」では必ずしも説明し難い、あるいはSNSの影響を色濃く感じさせる結果が見られた。
具体的には、4月の衆議院東京15区補欠選挙、7月の東京都知事選挙、11月の兵庫県知事選挙、同じく11月の名古屋市長選挙、そして10月の衆議院総選挙などである。
先に断っておくと、個別の選挙結果に対するSNSの具体的な影響度や因果関係を厳密に論証することは非常に難しい。ネットやSNSの使われ方も、候補者や陣営、有権者によって様々である。
しかし、これらの選挙戦において、SNSが従来以上に大きな存在感を示し、選挙の様相を変化させる一因となった可能性は、もはや無視できないものになっている。
例えば、失職後の再選挙となった兵庫県知事選で返り咲きを果たした斎藤元彦氏は、勝因の一つとしてSNSの活用を挙げたし、東京都知事選では、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏がSNS上で大きな注目を集めた。結果的に次点とはいえ170万票近い票を獲得した。
名古屋市長選では、SNSを効果的に活用したとされる広沢一郎氏が当選したが、一方でデマや誹謗中傷の拡散に苦しんだ候補者もいた。
また、総選挙における国民民主党の躍進なども、SNS戦略が奏功した面があるのではないかと分析されている。2013年がネット選挙運動解禁の「元年」だとすれば、2024年は、単なるニッチな層へのアピールに留まらず、より広範な有権者を動かしうるという意味で、「真のネット選挙元年」と呼ぶべき年になったのかもしれない。