就任初日から次々と大統領令に署名

 トランプ氏は大統領就任式の後、再登板を祝う若い支持者たちの前に顔を見せた。そこで「オフレコだが、君たちは私が今まで話してきた年寄りよりのみ込みが良いね」と笑わせ、就任演説ではまだ“本音”を見せていなかったことをうかがわせた。

 トランプ氏はまた、アメリカの「完全な復興」と「常識の革命」を始めるため、就任初日からホワイトハウスの執務室でWHO(世界保健機関)の脱退や、2021年の米議会襲撃事件で訴追された支持者ら1270人余りに恩赦を与えるなどの大統領令に次々と署名した。今後は100~200件の大統領令を発令するものと見られている。

支持者らの前で大統領令に署名するトランプ米大統領支持者らの前で大統領令に署名するトランプ米大統領(写真:ロイター=共同通信社)

 いずれにせよ、トランプ新大統領の就任演説に隠されたリスク面を過小評価してはいけないだろう。第1次トランプ政権は最初の100日間ですでに火だるま状態だったが、トランプ2.0では新たなトランプ流で国際社会が火だるまになる可能性もある。

 トランプ政治に反対の声を上げている米国民と、今後のトランプ流ディールの行方が不安な国際社会はかなりの緊張感の中で、よみがえった型破りな大統領と再び向き合うことになる。

大統領令に署名し、ペンを投げるトランプ米大統領大統領令に署名し、ペンを投げるトランプ米大統領(写真:ロイター=共同通信社)

【松本 方哉/まつもと・まさや】
ジャーナリスト。1956年、東京都生まれ。上智大学卒業後、1980年フジテレビに入社。報道局記者として首相官邸や防衛庁担当、ワシントン特派員などを務める。湾岸戦争、米同時多発テロ、アフガン戦争、イラク戦争などでは情報デスク、解説委員を務めた。2003年、報道番組「ニュースJAPAN」のメインキャスターに就任。専門は日米関係、米国政治と米国外交、国際安全保障問題。妻の介護体験を機に、医療・介護問題にも取り組む。日本外国特派員協会会員、日本メディア学会会員、白百合女子大学講師。著書に『突然、妻が倒れたら』(新潮文庫)「トランプVS.ハリス アメリカ大統領選の知られざる内幕」(幻冬舎新書)がある。