まるで「有権者への公約発表」だった
続いて行われた就任演説は、第1次政権の重厚長大な演説とは打って変わって、30分弱の短い演説となったが、スージー・ワイルズ首席補佐官が先ごろ、「2年間は全力で進み、有権者への約束を守り続ける」と述べていたように、就任演説は「有権者への公約発表」のようだった。

冒頭、「アメリカの黄金時代が今から始まる」と高らかに宣言して始まったが、内容はかなりダーク・トーンの演説となった。トランプ氏は新政権の優先課題として、①司法省の悪質で暴力的で不公正な武器化の中止、②不法移民の犯罪者からアメリカ国民を守る、③教育システムを変える、④グリーン・ニューディールを止める、⑤対外歳入庁を新設して外国に税金を支払わせる──などを列挙した。
このうち、「司法省の武器化の中止」については、自分が起こした性加害や2020年の選挙結果を覆そうとした件を裁判で追及してきた民主党勢力への「復讐」につなげる可能性もある。司法省から反トランプ派の職員たちを追放し、新たに「内なる敵」と呼ぶ反トランプ派の追及に使おうという考えだ。
また、移民に対しては、メキシコとの国境で国家非常事態を宣言し、国境に軍隊を派遣し、不法移民を送還するプロセスをスタートさせる構えだ。麻薬カルテルを外国のテロ組織に指定して「敵」として排除していく考えを示した。
さらに国を憎むように教える教育システムを急速に変えるとして、人種と性別を社会的に精査しようとする行き過ぎた政策を終わりにすると述べた。
具体的には民主党がこだわりを見せてきたLGBTQへの配慮について、「アメリカの性はこれからは男性と女性の2つだけだ」と宣言し、過去4年間のLGBTQ重視の社会認識を一転させる考えを明確化した。雇用面などで人種的な比率を重視する考えを改めさせ、今後は実力主義で臨むとの考えを強調した。