「あのコメントは認識が間違っている」

ボルトン:たくさんありますが、最近のもので言えば、「アサド政権の崩壊で、シリアで起きていることに米国は無関係だ」といったコメントです。この認識は間違っている。

 ダマスカスを現在支配しているハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)はISIS(イスラム国)の分派です(※)。今、中東に新たなテロ国家が出現することは大変危険です。シリアや中東で起きている事態の内実は非常に複雑ですが、トランプは問題の本質を理解していないから「もう関わらない」といった姿勢が取れるのです。

※HTSの前身であるヌスラ戦線はISISと敵対関係にあったという指摘もある(「シリアで新たな独裁が始まる」は本当か? アサド政権を倒した反体制派組織「HTS」の意外な素顔

──イスラエルを中心とした中東情勢やウクライナ戦争に関して、トランプ氏がどのような決断をしていくか注目が集まっています。

ボルトン:どちらの戦争にも、なるべく関わりたくないのが彼の本音です。自分の期間中に始まった戦争ではないということを強調しています。ウクライナとロシアが、そしてパレスチナとイスラエルが、どのような形で戦争の決着を迎えようが彼には関心がありません。

 これは、イスラエルからするとありがたい展開です。イスラエルはイランの核開発を潰したいので歯止めをかけてほしくありません。一方、ウクライナからすると、自国の領土をロシアに割譲するわけにはいかないので、米国がここで手を引くのは大きな懸念材料です。

 ただ、またここに帰結してしまうのですが、相手はあのトランプです。今日こうだと言っても、明日にはまた全く違うことを口にする。ですから、就任式で公式に何が発表されるかです。そこで語られることが真剣に議論すべきことになるでしょう。