日本の実質金利はまだ大きなマイナス

 今回のレビューでは、「何故、金融政策がゼロ金利制約に直面するような状況に至ってしまったのか」という点について、クリアなメッセージが発せられているようにはみえない。

 したがって、正常化が道半ばのまま再びゼロ金利制約の壁にぶつかった時、政府と中央銀行がどう対処すれば良いかは、引き続き答えを探さなければならない問題として残っている。

 次に楽観シナリオを検討してみる。

 トランプ2政権の下で、インフレ圧力がこれまで考えていたものよりは高まるにせよ、米国経済に調整は起こらず、また中国経済も、これまでよりは低成長ながら大きな混乱はなく推移することも考えられる。その場合、日本の金融政策には、引き続き「正常化」の余地が残る。

 この「正常化」とは、結局のところ、他国経済とほぼ同水準の実質金利が実現するということであろう。

 2025年初の時点における日本の実質金利は、短期でみても、長期でみても、大きなマイナスである。そうした経済は、他の先進国、先進国に追い付きつつある新興国をみても例がない。

 現在の日本経済のパフォーマンスを考えた時、このような今日の日本の実質金利のあり方はおかしくはないだろうか。確かに賃金は上昇しつつあるが、家計が定期預金など固定金利で運用をした場合のリターンは、物価上昇との兼ね合いでは実質で大幅なマイナスである。2024年末の株価はバブル時を上回り既往ピークなのに、だ。

 そうしたことを考えると、海外要因によって日本経済の自律的な拡大が止まらない限り、金融政策の正常化はさらに進められるだろう。実質金利はインフレ率を勘案した実質のリターン率でもあるので、その上昇が経済活動拡大の自律性を強める面もあるはずだ。

 もう忘れられつつあるが、日本経済はついこの前まで言わば集中治療室に入っていたのであり、そのリハビリには相応の時間がかかっても仕方がない。

 しかし、リハビリは誰にとっても厳しいもので、つらいからリハビリをしないと全快が遠のく。今後低下してくるだろうインフレ率との兼ね合いで、現在マイナス圏にある実質でみた政策金利を、次第にプラス圏に持っていくのは、そのリハビリのプロセスと言って良い。

 そうした方向での政策金利の引き上げが、2025年中続くのかどうか。