(表:共同通信社)

 米国経済を例にとれば、現在、企業の生産性改善を背景とした利益率向上を背景に株価は上昇基調にあるが、思わぬインフレ率の上昇が起こり、株価が大きく調整されるといったことも起こり得る。

 トランプ2政権の下で打ち出されるだろう親ビジネス的な諸施策により、勝ち組企業の好調は引き続き持続するという見方もある。そうであれば、米国の株式相場が大きく変調し、それが実体経済に波及して、日本経済も景気後退に入る、という可能性は低いだろう。

 しかし日本にとっては、中国経済の行方というもう1つの不確実性もある。どういうことが起きるか分からない将来に臨機応変に対応するためには、複数のシナリオを念頭に置き、それぞれへのアクションを予め考えておく必要がある。

悲観シナリオでは非伝統的な金融政策に戻るという判断も

 まず悲観的なシナリオから考えてみよう。

 少数与党という国内政治の不安定性の下で、米国経済あるいは中国経済の予想以上の変調により、日本の景気も後退局面に入り、そこでインフレ圧力も低下するといったことが起これば、金融緩和を求める声も強まるだろう。

 そうなれば、上述した日本銀行の整理からすれば、政策金利を下げ、それでもだめなら非伝統的な金融政策に戻るという判断も出てくることになる。

 多角的レビューでは、過去、政策金利のゼロ金利制約に直面するような事態に至ったために、金融政策ではデフレ的な経済環境から脱却できなくなったという総括もなされている。

 しかし、今の日本経済ではまだ、ゼロ金利制約に直面するリスクがなくなったわけではない。金融政策がゼロ金利制約に直面しないようにするのは、おそらく金融政策だけで実現できることではない。