第2部:ロシア経済/油価(露ウラル原油)と露GDP実質成長率の相関関係
ロシア経済は油上の楼閣にて、油価はロシアの生命線です。もちろんロシア経済のみならず、石油・ガスに依存する国々の経済は「油上の楼閣」構造になっています。
アゼルバイジャンのI.アリエフ大統領はCOP29の会場で「石油・ガスは天の恵みである」と公言。
米大統領選挙で当選したトランプ候補は、「掘って、掘って、掘りまくれ」と号令をかけています。
世界最大の産油国たる米国が原油増産すれば、油価は今後さらに下落していくこと必至です。
新生ロシア連邦のB.エリツィン初代大統領は油価低迷により退陣。後任の新生ロシア連邦2代目V.プーチン大統領は油価上昇を享受しました。
では、ロシア経済はどの程度油価(ウラル原油)に依存しているのか、数字で検証したいと思います。
露ウラル原油の油価と露GDP(国内総生産)実質成長率の関係は下記グラフの通りです。
このグラフをご覧いただければ、油価と露GDP成長率の間には強い正の相関関係が存在することが一目瞭然です。
GDP成長率=消費(主に個人消費)+投資(主に設備投資)+国家支出(公共投資等)+外需(輸出-輸入)です。
2022年は油価上昇したのにGDP成長率がマイナスになったのは、ウクライナ侵略戦争の影響です。欧米各国の対露経済制裁措置強化策により、露経済はマイナス成長となりました。
一方、2023年の油価(ウラル原油)は前年比で下落したのに、GDP成長率がプラス成長(+3.6%)となったのは、「国家購買」が増大したからです。
2023年1~11月度の「国家購買」は5.55兆ルーブルと公表されていましたが、通期(1~12月)は未発表となりました(1ルーブル約1.6円)。
昨年の露GDPは約170兆ルーブルゆえ、GDP成長率+3.6%はほぼこの「国家購買」額に相当するものと推測されます。
「国家購買」が何を意味するのか不明ですが、武器弾薬購入費や国防産業への発注費と考えれば、平仄は合います。
ある経済評論家が、「ロシア経済の2023年GDP成長率は+3.6%となり、好調である」とテレビで解説していましたが、ロシア経済の実態を知らない評論家の机上の空論と言わざるを得ません。