第1部:2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~24年11月)

 最初に、2021年1月から24年11月までの代表的2油種の週次油価推移を概観します。

 北海ブレントはFOB(Free on Board=本船渡し)スポット価格、ウラル原油は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB油価です。

 原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は現状存在しません。

 ゆえに油価は下落傾向にて、油価下落はロシア財政の悪化を招いています。

 北海ブレントは軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)。

 ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油。

 中国に輸出されているシベリア産ESPO原油は軽質・スウィート原油です。

 米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止しました。

 一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S1ソーコル原油/S2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。

 油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。

 2023年4月のOPEC+によるサウジアラビア自主減産合意を受け、油価は上昇開始。

 その後、油価は乱高下を繰り返しながら、今年4月以降の油価は下落傾向に入りました。

 露ウラル原油の2024年10月28日~11月1日週次平均油価は$60.31bbl(前週比▲$2.30)と下落。

 北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、最近は値差$13まで縮小。

 しかし原油性状の品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、依然としてウラル原油のバナナの叩き売り状態が続いています。

 これが欧米による対露経済制裁効果です。

 この安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。

 しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。付言すれば、中国がESPO原油輸入量を拡大しているのも同じ理由です。

出所:EIA資料より筆者作成/黒色縦実線:2022年2月24日/横線赤字:露国家予算案想定油価/黒字:油価実績