3部:油価 (露ウラル原油) とロシア国庫歳入に占める石油・ガス税収推移

 都合の悪い情報は隠す。

 これは情報操作の鉄則です。ゆえに発表されている数字よりも発表されていない数字および発表されなくなった数字の方がより重要となります。

 プーチン大統領は「ロシア経済は順調である」と豪語していますが、事実は正反対です。

 従来水面下で深く静かに進行していたことが、徐々に顕在化・表面化してきました。典型例を3つ挙げます。

 1つ目はロシア国家歳出の月次支出項目です。

 露財務省は2021年12月までは歳出欄の個別支出項目に数字が明記されていましたが、2022年1月以降は白紙になりました(歳出総額のみ記載)。

 従来は支出項目の国防費を数字で検証できたのですが、今では支出明細がブラックボックスになりました。

 2つ目は原油・天然ガス生産量です。

 生産量減少が表面化したためか、露政令により2023年3月度から露原油生産量は発表禁止。露ガスプロムは同年4月度から自社天然ガス生産量を非開示としました。

 3つ目は露ガスプロムの経営悪化です。

 筆者は昨年から「ガスプロムの経営悪化必至」と主張してきましたが、その通りになりました。

 露コメルサント紙によれば、2023年は6290億ルーブルの純損(約1兆円)、今年1~9月度は3090億ルーブルの純損を計上しました。

 筆者は、最近ロシア石油産業再編成構想が浮上した背景も同根と推測しております。

 ロシア財政は油価(露ウラル原油)に依存しています。

 油価と石油・ガス関連税収に強い相関関係があることは、下記グラフより一目瞭然です(出所:露財務省統計資料)。

 プーチン新大統領が登場した2000年の露石油・ガス関連税収依存度は約2割。その後油価上昇とともに石油ガス税収が増加して、プーチン大統領は油価上昇を享受。プーチン権力の源泉は油価上昇です。

 なお、この場合の石油・ガス関連税収とは、2018年までは炭化水素資源採取税と石油・ガス輸出関税の2種類のみで、2019年には主に石油精製業者を対象とする3番目の追加税が加わりました。

出所:露財務省統計資料より筆者作成

 上記グラフより、油価(ウラル原油)と露石油・ガス税収の間には強い相関関係があることが一目瞭然です。

 露プーチン大統領は「石油・ガス税収は3割にすぎない」と豪語しましたが、石油・ガス税収以外の税収を増税した結果にすぎません。

 今ロシアで起こっていること、それはロシア経済の弱体化です。