「高齢の親にやってほしいこと、直してほしいことがあるのに、意固地になって言うことを聞いてもらえない」と悩んでいる人は多い。だが、それは単に「歳をとったせい」ではなく、別の医学的な理由である場合も考えられる。高齢者も含めた医療コミュニケーションについても研究している眼科医の平松類氏が、高齢の親への接し方を解説する。(JBpress)
※本稿は『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(平松類著、日経BP 日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集したものです。
「加齢性の難聴」の可能性も
自分の親など歳をとった人にいくら言っても聞いてくれないのは「歳をとると意固地になるから」と勝手に決めつけてしまっている人もいます。でも実際は、高齢者は別の医学的な理由で言うことを聞いてくれない場合もあるのです。
例えば聴覚の問題があります。高齢になると、よく知られているように、耳がよく聞こえなくなります。見えなくなる、いわゆる老眼に関しては「どういうふうに見えないか」というのがよく知られています。「手元が見えない。けれども遠くが見える」。これが老眼です。ですから書類を手元から離せば文字が読めます。老眼鏡をかければ本が読めます。当たり前ですが、老眼の場合すべてが見えなくなるわけではありません。
このように、「老化」というものは、すべての機能が等しく衰えるわけではなくて、強弱があります。一方で、聞こえなくなるということに関しては、40代~50代の子世代には「どのように聞こえなくなるか」という情報があまりありません。なぜなら、老眼と比較すると加齢性の難聴になる年代はかなり上だからです。