「高齢の親が投資詐欺に遭った」「陰謀論にハマってしまった」と悩んでいる人は多い。それは「自分だけが知っている」ということが自尊心をくすぐるとともに、単純なものの方が脳に負担をかけないからだ。高齢者も含めた医療コミュニケーションについても研究している眼科医の平松類氏が、高齢の親への接し方を解説する。(JBpress)
※本稿は『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(平松類著、日経BP 日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集したものです。
自尊心をくすぐる「自分だけが知っている」
最近は高齢者を狙った投資詐欺なども巧妙になってきました。
親「そういえば、老後資金のためにいい投資先を見つけたから買っておいたよ。みんなで出資して、土地を買って建物を建てて、それを分けるっていうやつだよ。たくさん儲かるし、元本も保証されるらしい」
子「それ、どのぐらいお金を入れたの?」
親「定期預金を崩して300万ぐらいかな」
子としては頭を抱えたくなるでしょう。
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新しい投資商品の話を聞いたとき、「自分だけが知っている」状態になることも自尊心をくすぐります。退職して人間関係が狭まり、周りから敬われることが少なくなった高齢者にとって、「自分だけが知っている儲け話」は、優越感を与えてくれるものなのです。
高齢者が投資詐欺にあいやすいことと似たメカニズムが、いわゆる「陰謀論」にも当てはまります。陰謀論というのは、「世界は○○が牛耳っている!」「あの大事件は○○が仕組んだものだった!」など、誰もが知る大きな出来事が何者かの策略によって起きたと決めつけるような考えのことです。久しぶりに実家に帰ったら、親が怪しい陰謀論を唱えるネット動画を熱心に見ていた、という話を聞いたこともあります。