安心した介護生活を送れるかは施設選びにかかっている(写真:metamorworks/Shutterstock)
  • 最近は元気な高齢者も多く、介護はどこか他人事という意識が強い。しかしいざ病に倒れてからでは選択肢がなくなることも多く、やはり事前の情報取得を心がけるべきである。
  • 要介護者および家族も、公共施設での介護相談は敷居が高いと感じる人が多い。その場合は「介護カフェ」など気軽に情報を集められる民間サービスや、厚労省の関連サイトへのアクセスが」有効だ。
  • 介護施設を選ぶポイントはズバリ、(1)外部との交流(2)離職率(3)人員配置の3つ。ケアマネージャーなどの経験がある淑徳大学総合福祉学部教授で介護問題の第一人者・結城康博氏が、安心した介護生活を送るための決め手を解説する。

(*)本稿は『介護格差』(結城康博著、岩波新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

【後編】ヘルパーの「公務員化」で介護人材不足の解消を!「介護職は低賃金」というイメージ払拭に向け大胆な変革が急務

 安心した介護生活を営めるか否かは「情報」次第ともいえる。いざ「介護」が必要となった時、適切な判断・対応ができるか否かは、どれだけ介護情報を得ているかで明暗が分かれるといっても過言ではない。

 昨今、老後生活のための資産設計といったセミナーの一部に、「介護が必要になったら備えるべきこと!」というテーマが盛り込まれることがある。筆者も、金融機関や証券会社主催のセミナー講師を務めたことがあるが、老後の資産形成の目的の1つに、安心した介護生活を営むためと考えている投資家が多いようだ。

結城 康博(ゆうき・やすひろ) 1969年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒業。法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。1994~2007年、東京都北区、新宿区に勤務。この間、介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護関連の仕事に従事(社会福祉士、介護福祉士)。現在、淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)。元社会保障審議会介護保険部会委員。 著書『日本の介護システム――政策決定過程と現場ニーズの分析』(岩波書店)、『医療の値段』『介護 現場からの検証』『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(以上、岩波新書)、『介護職がいなくなる――ケアの現場で何が起きているのか』(岩波ブックレット)ほか多数。

 70歳代の高齢者の多くは元気であるため、どこか介護は他人事と考えている人も多い。しかし、介護は急に訪れる。もちろん、心身の機能が徐々に低下し介護が必要な状態が日増しに増えるケースもある。しかし、脳梗塞などで倒れて救急車を呼び、緊急搬送され治療を受ける、かろうじて命は救われたものの、後遺症が残り、右半身麻痺・言語障害、常時車椅子が必要な要介護状態となることはよくあるケースだ。このような事態に対して、事前に介護についての情報を取得していれば慌てずに着実な対応ができるはずである。

 そのため、日ごろから基本的な介護保険の仕組みから、家族も含めて頭の中に入れておくべきであろう。