交流、離職率、人員配置――選ぶための3つのポイント
なお、筆者のケアマネジャー経験から、介護施設を選ぶポイントを述べておこう。他の介護関連の専門書でも論じられているため、読者の方にはあくまで参考としてご認識いただきたい。
1つ目は、ボランティアや地域住民との交流が活発な介護施設は良質の可能性が高い。なぜなら、常に外部の人が出入りしているため、介護施設側も外部の人に見られても構わないという認識だからだ。とかく介護施設は入居している高齢者と、介護職員らとの関係に偏り閉ざされた社会になってしまう。そのため、一部の職員の勤務態度や話し方など緊張感が薄れる可能性がある。閉ざされた社会では、どうしてもサービス提供側の誠実な対応が緩慢となりやすい。
2つ目は、介護職員の離職率が低い介護施設だ。介護職員の年間離職率は平均約13%である(100人の介護職員がいれば約13人は1年間で辞める)。ゆえに介護施設を見学する際、積極的に「この施設の介護職員の離職率は?」と聞いてみよう。そして、職員が自信をもって回答すれば、離職率についてそれなりに意識していることが分かり「誠実」な介護施設の可能性が高い。介護職員の確保・維持は介護サービスの「質」に直結するため、離職率が職員までも浸透していることになる。
3つ目は、介護職員の人員配置基準である。原則、介護施設は高齢者3人に対して、介護職員や看護職員を最低1人は配置しなければならない。しかし、実際3対1で運営している介護施設は少なく、2対1、1.5対1と手厚くなっていることもある。むしろ、法定ギリギリの人員配置では、介護職員の労働環境が悪くサービスの「質」が良好ではないと判断できる。
最近、良質な介護施設を選ばないと、一部の介護職員が加害者となり入居高齢者に「虐待」してしまうケースが生じている。例えば、時々、介護職員が認知症高齢者のケアで苦労すると、腹いせに利用者を殴る事件がニュースで報道される。最悪、介護職員が高齢者を「殺害」するといった案件まで生じているのだ。厚労省資料では、養護者(家族など)による高齢者虐待件数は増加しているものの横ばいに推移してきている。しかし、養介護施設従事者(介護職員など)による高齢者虐待は増加傾向だ(表)。
親族が入所している介護施設の対応・ケアに疑問を抱いたら、遠慮せず役所や地域包括支援センターに相談に行くべきだ。世話になっているからと躊躇していると、もしかしたら高齢者が虐待の被害に遭っているかもしれない。まずは介護関係者に相談することで、何らかの対応をしてくれるはずである。
介護施設での「虐待」が発覚する経路としては、親族による訴えなどが多い。親族による「疑念」など直感が重要である。もっとも、介護施設の同僚が内部告発を行うという経路から虐待が明るみにでる例もある。