また、加齢性難聴で耳が遠くなってきた親には、ぜひ補聴器を勧めてあげてください。難聴は、アルツハイマー型認知症のリスク要因にもなります。耳が聞こえづらい状態を放置していると、認知機能にも影響があるのです。

(写真:metamorworks/Shutterstock)(写真:metamorworks/Shutterstock)

 しかし補聴器を利用して聴力を補えば、認知症のリスクを避けられることが分かっています。特に、65歳よりも若くして聴力が衰えてきた人は、それだけ認知症のリスクが高まるので、積極的に補聴器を活用したほうがいいといえるでしょう。

 ただし、補聴器をいやがる高齢者も多くいます。「補聴器をつけるなんて年寄りくさい」と思うのかもしれません。確かに昔の補聴器は大きくて目立つものでしたが、いまではかなり小型のものもあり、見た目の問題はだいぶ改善されています。

 それよりも気を付けなくてはならないのは、「使ってみたけれども、よく聞こえなかった」と言って、使うのをやめてしまうことです。

 実は補聴器は、買ってすぐに快適な状態で使えるわけではないのです。その点が眼鏡とは違います。もちろん、買ったときにお店の人がその場で調整はしてくれますが、その1回の調整だけでは不十分なのです。生活をしながら、その聞こえ具合に合わせて、何回も調整を繰り返して、やっとその人に合った状態になります。

 ですから、耳が遠くなってきた親に子ができることといえば、補聴器を勧めることと、「何回も調整すれば快適になるよ」と教えてあげることなのです。

高齢者だけど、自分が高齢者だと思っていない

 また、こうした「難聴によって話が聞こえにくい」という身体的な問題だけではなく、高齢者とそうでない人の間での意識の違いもあります。

 親が80代ともなると、腰が曲がったりして、子世代は「自分たちが守らなければ」という意識で見るようになります。けれども80代の親にしてみれば、50代であっても子どもはいつまでも子どもです。自分が30代や40代で10代の子どもを見ていたときの気持ちから変わっていないのです。

 つまり、子ども側から見ると親は「守る対象」になっているが、親としては自分が「守られる立場」とはちっとも思っていない。高齢者は「歳をとった」と自分で言うけれども、自分が「高齢者」だとは思っていないことが多いのです。

 親だけでなく、取引先や上司も、「歳をとったから言うことを聞かなくなった」のではなくて「もともと言うことを聞かない人」だったのかもしれません。周りの人からすれば、もう高齢なんだから言うことを聞くだろうと、つい思ってしまう。そのため「言うことを聞いてくれない」とイライラしてしまう。

 ですが、そもそも上司、社長が部下の言うことをハイハイと聞くはずがないのです。こうした人たちに言うことを聞いてもらおうと思ったら、要求するのではなく「お願いをする」という姿勢で接し、そうすることが得だと思ってもらう、つまり具体的なメリットを提示する工夫が必要です。