第6部:ロシア経済は 「戦争経済」 に突入
本稿では、露予算案に占める国防費割合推移を概観します。
ウクライナ戦争前の2021年の露国家予算に占める国防費は3.6兆ルーブル(14.4%)でした。
戦争開始後の2023年期首予算案国防費は5.0兆ルーブル(17.1%)でしたが、実績は6.4兆ルーブル(19.8%)。
今年2024年期首予算案国防費は10.8兆ルーブル(29.4%)、現在露下院で審議中の25年期首予算原案では13.5兆ルーブル(32.5%)です。
国防費は露国防省の予算案ですが、これに治安・情報費を算入すると、2023年実績は30%、24年期首予算案は39%、25年期首予算原案では41%になります。
ウクライナ戦争の行方次第では、当然さらなる国防費増大も不可避となりましょう。
2024年の期首予算案と25年の予算原案を見れば、ロシア経済は実質既に「戦争経済」に突入していることが一目瞭然です。
今年2024年の期首予算案国防費はウクライナ戦争前の21年実績比3倍、25年の予算原案では約4倍に膨張しています。
国防費に治安関連費用を加えると国家歳出案の約4割が治安・国防費となりますが、露大統領府の秘密資金等も勘案すれば、実質国家予算歳出案の約半分が国防・治安・情報関連費になるものと推測されます。
戦争経済は確実にロシア経済とロシア国民の生活を蝕んでいると言えましょう。
付言すれば、2023年の露GDPが+3.6%になったことに鑑み、ロシア経済は復活したと説明している人もいますが、それは正鵠を射ていません(はっきり言えば間違い)。
ロシアの国家財政支出が増えたことが、露GDPのプラス化に貢献したと理解するのが合理的です。
しかし、戦争経済がその国に持続的繁栄をもたらすことはありません。
国家支出増大により一時的にGDP成長率がプラスになったとしても、中長期的観点からはロシア経済弱体化の要因となるでしょう。
筆者は、ロシア経済は徐々にかつ確実に破滅の途を歩んでいると考えております。