頼みの綱はワクチンだが……
さらに悪いことに、アフリカ内陸部のルワンダでは、新たにマールブルク感染症と呼ばれる、致死的な感染症が発生したことも報告された。
10月7日時点で57人の感染が確認され、12人が死亡した。ルワンダではエムポックスも発生している。さらに同地域では、コレラ、マラリア、麻疹などの感染症がまん延しており、エムポックスだけを見ていれば良い状況でもない。
紛争と国内避難民、性感染、複合感染という3つの要素がエムポックスの解決をさらに困難にしている。
これまでに強毒型の1bは、キヴのほか、首都のキンシャサで主に確認されている。紛争地域でも首都との交流はあると見られ、これらの地域の対外的な交流がさらに他国にもエムポックスを広げることが推測される。
これまでにスウェーデン、タイ、ドイツで、強毒型の1bが確認されたが、性感染が関連している可能性は否定できない。そうしたシチュエーションでは、潜在的に感染が広がる恐れもありより深刻だ。
アフリカでは、コンゴ民主共和国とルワンダを中心に、ワクチン接種を広げようという努力が続いている。
10月16日までに、コンゴ民主共和国では2万897人がワクチン接種を受けており、南キヴではワクチンのカバー率が63%、北キヴでは72%と、進捗は悪くはない。
感染の中心での“消火活動”がどれくらい成功するかによって、エムポックスが鎮火されるかどうかがかかってくる。
一方で、他の国々ではワクチン接種の取り組みがこれから進むという段階だ。ルワンダではマールブルク感染症の発生で、ワクチン接種を止めざるを得ない状況になっている。
依然としてアフリカでの感染拡大は勢いが止まっているとは言えない状況にある。世界がその広がりに警戒すべき状況はしばらく続きそうだ。
【参考文献】
◎Mpox in Deutschland(The Robert Koch Institute)
◎Germany reports first mpox case from new clade
◎Special Briefing on Mpox and Marburg Outbreak | Oct 17, 2024
◎Adepoju P. Rwandan Marburg outbreak sparks vaccine efforts. Lancet. 2024 Oct 12;404(10461):1389. doi: 10.1016/S0140-6736(24)02241-4. PMID: 39396535.
◎エムポックス急拡大の背景に「強毒型1b」と「売買春」、ゲイからヘテロに感染が広がり始めた意味
◎野放図なセックスが最大のリスク、世界最大の“性地”でエムポックス1bが確認された衝撃
星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表取締役/編集者 獣医師
東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPにおいて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。獣医師。
ステラ・メディックス:専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修をサポートしている。また、医療情報に関するエビデンスをまとめたSTELLANEWS.LIFEも運営している。
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